ご存知、ロシアとウクライナの間で戦争が起きています。日本の報道ではウクライナの次は台湾が危ないという論調のものが多いです。では、当の台湾人は今回のウクライナ情勢を見て自分たちが中国から攻撃を受ける可能性についてどのように考えているのでしょうか?以下で台湾現地メディアの調査内容を紹介していきます。
【目次】
一般の台湾人はウクライナ情勢に関しアメリカは派兵すべきと考えているか?
台湾の民間調査(台灣民意基金會)によると、「今回のロシア・ウクライナ戦争において、第三次世界大戦を避けるためにアメリカはウクライナに派兵するべきではない」という考えに対し、調査対象の台湾人の2.7%が大いに賛成し、23%が賛成し、32.9%があまり賛成しておらず、18.2%が全く賛成しておらず、12.9%がノーコメントで、10.3%が分からないor回答拒否という結果になりました。
この調査結果により、半数以上の台湾人がロシアの侵略を防ぐために米国がウクライナに軍隊を派遣すべきであると考えていることが分かりました。なお、この調査は政党(政治思想)、年齢、民族、教育レベルに関係なく、すべての台湾人に共通する結果でした。
一般の台湾人はロシア・ウクライナ戦争勃発後、台中戦争が始まると考えているか?
台湾の民間調査では、「ロシア・ウクライナ戦争の勃発後、中国共産党と台湾の戦争が始まると思いますか?」という質問に対し、調査対象の台湾人の7.1%は可能性が非常に高い、19.5%は可能性が高い、42.7%は可能性が低い、20.2%は全くその可能性はない、10.5%はノーコメントorわからないor回答拒否という結果になりました。つまり、全体の27%はロシア・ウクライナ戦争勃発後に中国共産党と台湾の戦争が始まる可能性があると考えていますが、63%はその可能性はないと考えているということです。
この調査を支持政党別に見ると、民進党(与党、台湾独立派)支持者の66%が中台戦争はありえない、29%がありえると考えており、国民党(最大野党、親中派)支持者の66%が中台戦争はありえない、27%がありえると考えていることが分かりました。民進党と国民党は思想が反対と言っても過言ではなく、台湾内では常に対立していますが、中台戦争に対しては珍しく意見が一致しました。
また、年性別に見ると、20〜54歳の層と55歳以上の層を比較したところ、若年層は中国からの攻撃に対してより強い危機感を持っていることがわかりました。ただし、全体としては中国からの攻撃の可能性は低いと考えていることが分かります。
最後に、教育レベル別に見ると、教育レベルが高いほど危機感が強いですが、全体としてはやはり中国からの攻撃の可能性は低いと考えていることが分かりました。
台湾政府の見解
ロシア・ウクライナ戦争の勃発に関し、中国の外長・王毅氏は「台湾問題とウクライナ問題は本質的に異なる。台湾は中国の領土であり分割することのできない中国の一部分である。台湾問題は完全に中国の内政問題であるのに対し、ウクライナ問題は基本的にロシアとウクライナという異なる国家間で起きた争いである。」と述べています。
台湾総統・蔡英文氏も台湾問題とウクライナ問題は異なると述べつつも、その理由は中国側とは全く違うものとなっています。蔡英文氏は「地政学的な観点、台湾を取り巻くサプライチェーンの重要性、防衛力、同盟国との関係など、どの点から見ても台湾はウクライナより安全であり、台湾とウクライナは異なる。」と述べています。
この蔡英文氏の発言を噛み砕くと、つまり、台湾は島であり中国とは海を隔てているため攻めにくく、また、アメリカにとっては台湾は第一列島線を維持するための重要な位置にあるため守る必要があります。そして、台湾には世界のIT産業を支える巨大な半導体企業(台積電など)があり、西側諸国にとって台湾を失うデメリットは大きいです。それから、台湾周辺には日本やアメリカなど同盟関係にある国が多く存在し、武器設備などの防衛力もウクライナとは異なるため、中台戦争が起きた時の中国側のダメージも大きいと言えます。確かに台湾を取り巻く情勢は緊迫していますが、状況はウクライナと全く異なると言えるでしょう。
※調査機関:台灣民意基金會/調査期間:2022年2月14日〜15日/調査人数:1079人