2022年、台湾ドルはアジア最強の通貨に。台湾ドル高の理由を解説。

コラム 台湾

2022年、台湾ドルはアジア最強の通貨に。台湾ドル高の理由を解説。

 

2020年から2022年現在にかけて台湾ドル高が進んでいます。

以下は対日本円の値動き。

対日本円

対日本円

グラフを見ると綺麗に右肩上がりになっているのが分かります。

そうです。絵に描いたように台湾ドル高・円安が進んでいるのです。

でも、このグラフだけ見ると「日本円が弱いからでは?」と感じることでしょう。

もちろん日本円が弱いことは事実ですが、台湾ドルは米ドルに対しても強いんです。

以下は対米ドルの値動き。

対米ドル

対米ドル

ここ数ヶ月は米ドル高にやや動いてるものの、全体としては台湾ドル高のトレンド(右肩上がり)になっていることが分かります。

それにしても、なぜこんなにも台湾ドルは強いのでしょうか?

今回は台湾現地メディアの記事を参考に台湾ドル高が進んでいる原因をまとめていきます。

 

台湾ドル高はどの程度進んでいるのか?

実際にはどの程度台湾ドル高が進んでいるのでしょうか?

対日本円でいくら伸びたか?

対日本円でいくら伸びたか?

対日本円では、ここ5年で先安値だったのは2019年8月で、1台湾ドル=3.38円でした。(左の矢印)

そして2022年4月現在は、1台湾ドル=4.30円にまで達しています。(右の矢印)

なんと27.2%も台湾ドル高・円安になっているのです。

なお、現在の4.3円という数字は過去15年で見ても最安値となります。

次に米ドルを見ていきましょう。

対米ドルでいくら伸びたか?

対米ドルでいくら伸びたか?

対米ドルでは、ここ5年で最安値だったのは2019年6月で、1台湾ドル=0.031米ドルでした。(左の矢印)

そして2022年1月には、1台湾ドル=0.036米ドルになっていました。(右の矢印)

なんと16.1%も台湾ドル高・米ドル安になったのです。

現在はやや台湾ドル安・米ドル高に進んでいますが、それでも全体で見るとまだまだ台湾ドル高の水準にあります。

 

2020年以降に台湾ドル高が進んだ理由

以下は台湾のビジネス雑誌「商業週刊」にあった分析です。

元大寶華綜合經濟研究院の梁國源氏は「2020年後半から台湾の輸出量が増え、台湾の製造業のPMIが他国と比べて著しく上昇したためである」と述べています。ここでいう製造業とは主に半導体産業を指しています。

台湾には多くの半導体関連企業があり、世界最大の半導体受託製造会社であるTSMC(台湾積体電路製造)もあります。2020年以降はコロナによる在宅勤務やIT化の影響でPCなどの精密機器が売れ、それに伴い半導体企業の需要も増えました。

こうして台湾経済が活性化され、それにより台湾ドル高が進んだのです。

また、対日本円では、日本が利上げをしていないことも大きな理由となります。台湾経済の好調と日本が利上げをしないことが原因で、台湾ドル高・日本円安が急激に進んでいるのです。

 

台湾ドル高は台湾と世界に対しどのような影響をもたらすか?

台湾は他国から材料を輸入し製品を海外に輸出する産業が多い国です。半導体企業もこうした企業に分類されます。

当然、台湾ドル高が進めば輸入の際は材料が安く仕入れられますし、輸出の際は他国のライバル企業に対して価格競争力を失います。

よって、かつては台湾の大企業にとって台湾ドル高は歓迎できない状況だったようです。

また、かつて台湾の製造業には粗利率が3%程度の企業が多く、通貨高による利益の逼迫が大変だったと聞きます。

しかし昨今の台湾企業は利益率が改善しており、粗利率30%以上の企業が多くなってきています。

ダイアモンド社の記事によると、昨今は台湾の半導体企業であるUMC(聯華電子)は粗利率が33%を超え、スマートフォン向け半導体設計最大手のメディアテック(聯発科技)は46%、TSMC(台湾積体電路製造)は50%を超えています。

こうした高利益体質によりちょっとの台湾ドル高では動じない状況になりつつあるのです。

また、企業だけでなく市民の日常生活にとっても通貨高はプラスだとの見方があります。

現在世界的にインフレが進んでいますが、台湾ドル高により物価上昇の圧力が和らいでいるというのです。

台湾政府がこの通貨高は企業の経営にも一般市民の生活にも大きな影響がないと判断し政府が台湾ドル安となるよう舵を取らなければ、台湾ドル高が固定化される新しいフレーズに入るでしょう。

今後、もう台湾は日本にとって安い国ではなくなってしまう可能性が高いのです。

参考記事:台幣為何這麼強?經濟學家曝明年價位

参考記事:日本が逃した大チャンス「通貨高」を、台湾は経済躍進の絶好機と歓迎する理由

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