ここでは台湾のクラウドファンディング事情について解説をしていきます。
台湾クラウドファンディングのマーケット規模、大手プラットフォーム、人気のあったクラウドファンディング、日本メーカーのプロジェクトなどについてまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。
※クラウドファンディングは台湾の中国語で「群眾募資」や「群眾集資」と言います。
【目次】
台湾のクラウドファンディングの市場規模
2023年、台湾全体では2,100件を超えるプロジェクトが成功し、史上最高記録を達成しました。しかし、総支援額は約35.6億台湾元に止まり、2022年の37.7億台湾元をわずかに下回りました。また、支援者の数も約92万人に止まり、2020年以来初めて100万人を下回りました。
総支援額と支援者数がともに減少したものの、2023年には台湾のクラウドファンディング業界で「1000万台湾元を超えるプロジェクト」の件数が合計で81件に達し、2020年の70件という過去最高記録を更新しました。これら81件のプロジェクトでは、支援者が計32万人、支援額が計約17億台湾元に達しており、年間総額のほぼ半分を占めました。
参考資料:群眾觀點 CrowdWatch|2023 台灣群眾集資產業年度報告
台湾の大手クラウドファンディングプラットフォーム(5つ)
嘖嘖募資平台(zeczec)
嘖嘖(zeczec)は2011年に設立されました。クラファン発起人の夢の実現をサポートするという思いを込め、「素晴らしいことを実現させる(讓美好的事物發生)」というテーマの元に運営されています。サイトのデザインはスタイリッシュでシンプルですが、プロジェクトは非常に多様であり、プラットフォームの知名度も高いです。
なお、公式サイトでは2011年夏の設立から累計し2024年6月末時点で計9049のプロジェクトがあり、そのうち6880のプロジェクトが成功し、支援者の総数は4,148,785人にのぼり、買い切り型プロジェクトの支援額合計は12,638,139,045台湾元、サブスク型プロジェクトの支援額合計は144,324,921台湾元に達したと公表しています。
挖貝募資平台(WaBay)
挖貝(WaBay)は2021年に貝殼放大群眾募資顧問公司が設立したクラウドファンディングプラットフォームで、クラウドファンディングのコアバリューである「信頼と責任」を重視しています。この運営会社はプロのコンサルティング経験があり、WaBayプラットフォームはネット上で非常に高い評価を受けています。
挖貝(WaBay)の主なプロジェクトタイプは、公益活動、映像作品、デザインなど多岐にわたります。有名なプロジェクトとしては、台湾石虎(台湾ヤマネコ)の保護計画があります。
挖貝(WaBay)は公式サイト上で、過去に集めた金額は25億台湾元を超え、支援者はのべ80万人を超え、プロジェクトの成功率は90%超えを誇ると公表しています。
flyingV募資平台
flyingVは嘖嘖募資平台(zeczec)の1年後に設立されたクラウドファンディングプラットフォームであり、台湾では古くからあるプラットフォームの一つとして知られています。主なプロジェクトタイプは、小型家電、コンピュータ関連製品(コンピューター、通信、家電)、ツール類、海外代理商品が中心で、テクノロジー関連のプロジェクトが多い傾向にあります。
さらに、flyingVは企業向けの資金調達サービスも提供しており、プロのクラウドファンディングコンサルタントと一緒に自身のプロジェクトについて相談することができます。
また、公式サイトではこれまでに1000以上のプロジェクトを成功させた実績があると公表しています。
MYFEEL募資平台
URL:https://www.myfeel-tw.com/
MYFEELは近年急成長したアジアの国際クラウドファンディングプラットフォームであり、台湾、東南アジア、日本で同時にローンチされています。海外市場に進出を目指す企業にとっては非常に優れたクラウドファンディングプラットフォームの一つです。
さらに、MYFEELはクラウドファンディングコンサルティングサービスや代行プランも提供しており、クラウドファンディングに初めて挑戦する企業にとっては大きなサポートとなります。
MYFEELの代表的なプロジェクトと言えば、PHILIPSと共同で行ったナノレベルの抗アレルギー空気清浄機が挙げられます。当初の支援額の目標は50万元でしたが、最終的には700万元以上の資金を集めるという大成功を収めました。
Hahow募資平台
Hahowは2015年設立の教育とクラウドファンディングを結びつけたプラットフォームです。
このプラットフォームで自分の特技を教える講師になりたい人は、最初に短い紹介ビデオを使って募集したい支援人数と支援額を提示し受講予約を募集します。そして、30日以内に目標を達成したら本格的に講座内容をアップします。Hahowでは受講者が講座内容を注文できることも大きな特徴の一つです。
Hahowの講座の価格は約1,000元から3,000元と比較的安価であるため、多くの人が定期的にHahowをチェックして興味のある講座が事前予約できるかどうかを確認しています。
なお、設立から現在までに1000以上の講座が開講され、講座内容はコーヒーの淹れ方から動画撮影の技術まで多岐にわたります。また、会員数は108万人を突破しており、その会員の国籍は台湾だけでなく香港、マレーシア、シンガポールなどの中華圏に広がっています。
2023年、台湾で支援金額が多かったプロジェクトのランキング トップ20
順位 | プラットフォーム | 支援内容 | プロジェクト(クリックでプロジェクトページが開きます) | 支援金額(単位:台湾元) |
1 | 嘖嘖 | ロボット掃除機 | 追覓 L20 Ultra 掃地機器人 | 124,653,644 |
2 | 挖貝 | 難民援助 | 台灣雷伊漢勒世界公民中心營運計畫 | 87,147,797 |
3 | 嘖嘖 | ロボット掃除機 | Q Revo MaxV AI 掃地機器人 | 61,390,459 |
4 | 嘖嘖 | 残飯処理機 | 廚餘大師 Air | 59,599,149 |
5 | 嘖嘖 | ロボット掃除機 | 追覓 Dreame L10s Prime 掃地機器人 | 52,050,717 |
6 | 嘖嘖 | 蓄電器 | ZENDURE 小坦克戶外行動電站 | 45,822,640 |
7 | 嘖嘖 | 水筒 | TiKOBO 純鈦鯨魚杯第二代 | 40,700,851 |
8 | 嘖嘖 | AI会議議事録要約デバイス | PLAUD NOTE AI 智慧錄音卡 | 40,284,324 |
9 | 嘖嘖 | 掃除機 | 追覓 H12 Dual 洗地吸塵器 | 38,657,170 |
10 | 嘖嘖 | 水筒 | Hiding Tou 新國民飲料杯 | 38,289,487 |
11 | 挖貝 | 電子書籍リーダー | Pubook Pro 10.3 | 36,820,700 |
12 | 嘖嘖 | カレンダー | 2024 每天都想史 歷史食譜文化曆 | 32,218,117 |
13 | 嘖嘖 | 家具・化粧台 | 居家先生 超級收納化妝台 | 28,131,472 |
14 | 嘖嘖 | 木工デザイン用カッター | Cubilo X 走走 CNC 切割機 | 28,048,180 |
15 | 嘖嘖 | 多機能スーツケース | AZPAC Trucker2.0 旅行箱 | 26,837,656 |
16 | 嘖嘖 | エアーフライヤー(油を使わない揚げ機) | 飛利浦 星樂透 透視海星氣炸鍋 | 26,447,318 |
17 | 嘖嘖 | おしゃれ地図 | 3D 木質世界地圖全新航海版 | 25,750,269 |
18 | 嘖嘖 | 鍋 | MakEat Pan 好好煮食鍋 | 23,488,812 |
19 | flyingV | ゲーミングスマホ | 紅魔 8 Pro 電競手機台灣版 | 23,251,042 |
20 | 嘖嘖 | 掃除機 | 飛利浦 Jedi 潔地武士智慧洗地機 | 21,626,151 |
台湾で近年人気のクラウドファンディングプロジェクトの傾向
傾向①:生成AI及びその関連サービス
2022年末にChatGPT 3.5がローンチされ、2023年は生成AI(Generative AI)が急速に普及することになりました。
それに伴いクラウドファンディングプラットフォームにおいても生成AIを導入したプロジェクトが増えています。具体的には、「PLAUD NOTE」や「Pubook Pro」などChatGPTを搭載したデバイスが登場しました。
- PLAUD NOTE:ChatGPTを利用し通話や会議の内容を記録及び文字化し要約してくれるデバイス。
- Pubook Pro:ChatGPTを搭載した電子書籍リーダー。書籍の中に知らない語彙があったら画面切り替えをすることなくその場ですぐにChatGPTに質問できる。
傾向②:旅行用品
3年間続いたCOVID-19のパンデミックが終息し台湾人の海外旅行熱が高まり、それに伴い旅行用品の需要が増加しています。
台湾では挖貝(WaBay)、flyingV、嘖嘖(zeczec)などのプラットフォームで成功した旅行用品(スーツケース、モバイルバッテリー、モバイル翻訳機など)の累積金額が2022年の2,700万台湾ドルから2023年は1.6億台湾ドルに増加し、5倍以上の成長を遂げました。
有名なものだと、多機能スーツケース「AZPAC Trucker 2.0旅行箱」がプロジェクト期間中に3,564人からの支援を受け、累積金額が26,837,656台湾元に達し、台湾で最も多くの人に支援され最も多くの支援金額を集めたスーツケースとなりました。
傾向③:電子書籍リーダー
近年台湾でも電子書籍の需要が高まっており、2023年にはいくつかの電子書籍リーダーがクラウドファンディングで成功を収めています。
電子書籍リーダーのKobo Elipsa 2E、TCL NXTPAPER 11、Pubook Proは、2023年にいずれも挖貝(WaBay)で1,000万台湾ドルを超える資金を集めました。2024年初めには、電子書籍ブランドHyReadの最新リーダーGaze Mini Cが挖貝に登場し、10日間で1,000万台湾ドルを突破しました。
傾向④:メンタルや容姿の悩みに関するプロジェクト
パンデミック以降、人々の間でメンタルや容姿に関する不安が増加し、2023年にはメンタルヘルス支援や心と体を向上させるプロジェクトが増えています。
挖貝(WaBay)では美容健康食品「白璃萃膠囊」が注目を集め、支援金合計額が1000万台湾元を超えて台湾の美容健康食品で最も成功したプロジェクトとなりました。
傾向⑤:占いや人生指南を中心としたオンライン講座
2023年には占星術や人生指南をテーマにしたオンライン講座が人気を集め、具体的には「全方位占星学」のようなプロジェクトが成功を収めています。
また、近年はHahowやPressPlay Academyなどのオンライン講座に特化したプラットフォームが増えており、特定の分野に特化した新しいプラットフォームもいくつか登場しています。
台湾のプラットフォームにある日本メーカーのプロジェクト事例
台湾のプラットフォームにはどのような日本メーカーのプロジェクトがあるのでしょうか?
ここでは台湾最大手のプラットフォーム「嘖嘖(zeczec)」に掲載されているプロジェクトを見ていきます。
プロジェクト紹介ページのフリーワード検索で「日本」と入力します。
2024年6月末現在、過去の終了したプロジェクトも合わせると計480件以上の日本関連のプロジェクトが表示され、現在進行形で支援を募っているプロジェクトとしてはアイリスオーヤマの除湿機、ZENKOの包丁、日立の生体認証ロックなどが上位にありました。
この方法で閲覧していくと、支援金額、支援者数、支援成功の有無、支援を募った時期などを簡単に確認することができます。
他にどのようなプロジェクトがあるかを確認したい場合は、各プラットフォームのフリーワード検索欄に「日本」と入力して調べてみましょう。