2021年10月、台湾の最低賃金が改定されることが発表されました。
台湾はここ数十年で最低賃金の上昇が続いています。
今回は台湾の最低賃金がどの程度上昇しているか、それにより国内でどのような影響が考えられるのかについてまとめてみました。
【目次】
2022年から台湾の最低月収は25,250元、最低時給は168元に
最低賃金改定は2022年に行われ、最低月収は現在の24,000元から25,250元に、最低時給は160元から168元になります。
今回は約5%ほどの上昇とのことで、賃金アップによる物価高や中小企業の倒産などが懸念されています。
過去10年の台湾の最低賃金の推移
画像元:https://udn.com/news/story/7238/5778790
年度 | 最低時給と上昇率 | 最低月収と上昇率 |
---|---|---|
2017年 | 133元(+5.6%) | 21,009元(+5%) |
2018年 | 140元(+5.3%) | 22,000元(+4.7%) |
2019年 | 150元(+7.1%) | 23,100元(+5%) |
2020年 | 158元(+5.3%) | 23,800元(+3%) |
2021年 | 160元(+1.3%) | 24,000元(+0.8%) |
2022年 | 168元(+5%) | 25,250元(+5.2%) |
資料元:https://www.bnext.com.tw/article/65502/basic-salary-raise-2022
台湾は1〜2年に一回ほど最低賃金の改定を行なっています。
ここ10年を見ると、2011年に最低月収17,880元、最低時給98元だったのが、2022年には25,250元、168元になりました。
たった10年間でおよそ1.4〜1.6倍上昇したのです。
最低賃金改定に至った経緯
2021年の台湾の経済成長率は約5.88%であったため、今回の最低賃金改定が行われました。
ただし、新型コロナウイルスにより経済的ダメージを受けた業界も多いため、業界によっては今回の最低賃金改定を適応しない特別措置も用意しています。
最低賃金改定による経済への影響は?
中華民国労働部長 許銘春氏は、ノーベル経済学賞受賞者のDavid Card氏の研究結果に基づくと、最低賃金による物価及び雇用状況への大きな影響はないと述べています。
ただし、最低賃金上昇により事業者の人事コストが上がることは間違いなく、実際、多くの事業者が販売価格を上げるなどの対策を立てているため、多少の物価上昇は避けられないと考えられています。
また、なかには資金的に余裕がある大企業は採用を減らして機械による自動化を進めたり、非正規雇用者を正社員に改めて1人あたりの労働時間を増やすことで人件費を下げる可能性もあり、労働者にマイナスの影響が出るとも考えられています。
最良の状態は、物価上昇により労働者の給料が増え、社会全体としての購買力が上がることでしょう。
最低賃金改定が日本人にもたらす影響は?
今回、台湾の最低賃金は約5%上昇しました。
これに伴う物価上昇と円安台湾元高により、今後台湾旅行が以前より割高に感じられることは間違いないでしょう。
また、台湾におけるコストの上昇、円安台湾元高による輸出企業の利益逼迫により、海外工場建設を検討する台湾企業も増えるでしょう。
実際、過去の記事「世界最大の半導体製造企業「TSMC/台湾積体電路製造」、日本工場建設検討を発表」にも書いたように、台湾を代表する製造企業が日本に工場を建設する例も出てきています。
台湾が割高になり、日本が割安になる流れはいつまで続くのでしょうか?隣国としてこれからも注視していきたいところです。