現代の若い中国人の旅行スタイル

コラム ニュース 中国

以前、中国人観光客の「爆買い」が日本でビッグニュースになり、多くの日本人を驚かせてしまいしまた。それ以来、「中国人」は「お金持ち」というラベルを貼られるようになりました。さらに、国連の専門機関である世界観光機関の統計で海外旅行者が海外旅行先の国(地域)に支払う消費額の国別トップ10を発表しています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/世界観光ランキング#国際観光支出

 これを見ると、2015年から中国がトップを独走しています。

 結構お金がかかるイメージの旅行は、なぜ中国でこんなにも人気でしょうか。本当に噂通り、中国人のお金持ちが多いからでしょうか。そうだったらいいなと思っていますが、実は、中国での旅行というのは、「お金」より「戦略」です。「何を言っているのか、全然意味が分からない」と思っている方もいるかもしれませんが、簡単にいえば、「お金があればあるほど、旅が楽しくなる」のではなく、「いかに少ないお金で多くのところへ行けるか」というのが旅行の目的の一つになっているのです。

■旅行人気の理由

 「旅行はもちろん行きたいけど、経済力がついていかない」と思われがちですが、なぜ中国での旅行ブームは今でも勢いが収まらずに、よく話題になっているのでしょうか。その理由は、これです!

 「穷游(Qióngyóu)」

 直訳すると、「貧乏人の旅行」ということ意味ですが、実際そうではなく、「最小限の費用で旅行を最大限に楽しむ」という、主に若者中心の旅行スタイルを指します。

 この流行りのきっかけは「小红书」・「微博」などといった中国SNSの急速発展だと言えるでしょう。経済力をアピールする旅行の投稿ではなく、予算を徹底的に抑えて、多くの場所を楽しめる「穷游レポート」が旅行ブームを引き起こしたと考えられます。自身の旅行経験に基づいて、当時立てた観光コースを詳細に記載しているほか、そのコースの中で、ぜひ行って欲しいところや、行って損したところも明確に標記しくれます。定番から現地の人しか知らない穴場的なところの、営業時間やチケット料金、アクセス方法などの紹介もあります。国内だけではなく、憧れの海外も気軽にいけるプチ旅行になっています。

 また、旅行ブームをさらに進化させた事に、こんな事もありました。それはひとつの退職願です。河南省にある中学校の教師は「自分の目で見てみたい、この広い世界を。」と一言を残し、教師をやめてしまいました。綺麗な字で、勇気と自由が溢れる退職願がネットで話題になって、「一度きりの人生をムダにしたくない」「仕事が忙しすぎて、自分の時間がほとんどない」「旅行したいけど、家族や仕事を色々考えると、なかなか行けないんですね」…たくさんの共感を引き起こし、旅行への関心度が一段と上がりました。

(当時の退職願)

 そして、それまでのSNSに加え2016年9月自分の生活を共有できる「抖音(Tik Tok)」が開発されて、旅行の美しい写真や動画など、多くの若者を惹きつけたのもひとつの原因だと思われます。

■ツアー旅行よりも個人旅行

 旅行プランを立てるとき、まず考えるのはツアーで行くか、個人で行くかですよね。中国だと、個人自由旅行が圧倒的な人気を得ています。その原因は二つの方法のメリットとデメリットからわかります。

「ツアー旅行」のメリットとデメリット

<メリット>

      ○旅行費用が一目でわかり(個人の買い物や食事以外)、値段が割と安い
      ○全て手配してくれるので手間もかからない、有名なところが効率よく観光できる
      ○サポート体制が整えており、現地でのトラブルなどの不安も解消

<デメリット>

      ●場所や時間、ホテルや航空会社などが選べないので、自由がない
      ●団体行動で、長い待ち時間が出る
      ●強制的にお土産屋さんへと連れていかれる場合がある

「個人旅行」のメリットとデメリット

<メリット>

      ○なんでも好きなように選べるので、自由
      ○観光にかける時間や、集合時間などで決まりがなく、楽
      ○団体での移動がないので、周りの目を気にしなくて済む

<デメリット>

      ●値段がツアーよりやや高め
      ●全て自分で調べてプランを立てる、かなり面倒
      ●何があっても自己責任

 以上のようなメリットとデメリットを見る限り、確かにツアー旅行がとっても楽でいいように思えます。しかし、「ゆっくりと休もうと思って旅行を選んだのに、ツアーで色々と制限にとらわれると、せっかくの旅行が台無しにしてしまう可能性が高いのも嫌だね」と思っている方もいませんか?
 また、「穷游」の概念ができて、ツアー旅行の値段的な優勢もなくなっています。なので、中国では個人旅行が人気ですね。

■アプリで自分なりのモデルコース作り

 個人旅行を決めて、あとはプランを立てるだけです。先ほどSNSでの「穷游レポート」にもちょっと触れましたが、ここでは「旅行に至るまで」のプロセスを詳しく紹介していきたいと思います。
大きく分けると、概ね以下のようになります。

1.旅行先の選択
2.プランの作成

この二つです。

 まず、SNSで最近話題の観光地を調べて、行きたいところを絞ります。主に使われるのは以下のSNSです。
・抖音(Tik Tok)
・微博(Weibo)
・小红书(RED)
・微信(Wechat)

 次に、プランの作成について、予算を最小限に抑えて、行きたいところで思う存分楽しんで帰るのが最終目的ですので、ここからたくさんのアプリが登場し、使い倒します。

*チケット

 飛行機のチケット代は旅行費用の中で、かなりの出費だと言えるでしょう。そのため、予算を最小限に抑える第一歩は、早めに格安チケットをゲットすることです!ただ、ホームページだと、なかなか割引がないので、このとき、神アプリを活用します。格安チケットなら、「去哪儿」「携程」「飞猪」「Skyscanner」「马蜂窝」「穷游」「天巡旅游」など、数えきれないほどあります。よく値段を比較して調べることが重要です。なるべくいい値段のチケットを買うのに、それなりの根気が必要ですね。笑

(左から:「携程」「去哪儿」「飞猪」)

*宿泊先

 宿泊先と言ったら、最初に頭に浮かんでくるのはホテルではありませんか?ですが今、中国で人気なのは、ホテルではなく、「民泊」です。以前のコラムでも紹介したのですが、中国の民泊はコスパ抜群で、若者に大人気〜!日常から非日常まで、様々な内装スタイルで、観光客の心をゲット!さらに、値段も驚くほど安いです!(しかし、人気のところは1〜2ヶ月くらい、泊まりたいところがあれば、早めに予約しないと部屋がなくなる可能性があるので、要注意!)もちろん、ここでも神アプリがあります!国内外、需要によって、使うアプリが異なってきます。

左から「途家民宿」「榛果民宿」「爱彼迎」<単位:元>

*プラン

 最後、もっとも重要なのは観光コースです。「小红书」・「微博」などのSNSで、みんなの旅行実体験を載せているので、それをたくさん見て、行きたいところや食べたいものなど全部絞りきって、自分なりのプランを作るのはいいでしょう。
例えば、台湾に行こうとして、「小红书」で「台湾攻略」で検索して見れば、こういう画面が出てきます。(*ここでの「攻略」は台湾を攻めて陥れるという意味ではなく、台湾を満喫することができる「戦略」という意で、観光のモデルコースを指します。)

「小红书」で「台湾攻略」で検索した結果

 人気観光地、SNS映えスポット、グルメ、タピオカ特集、地図、観光コースなど、さらに、4000元で6泊7日台湾旅行、台湾に関する情報が溢れるほどあります。

台湾の友達がいない?
ツアーで行きたくない?
どこへ行けばわからない?
…などなど

個人旅行で出そうな心配や、要望はここで解決できるはずです!

■SNSの写真投稿

 旅行先から帰ってきても、旅行の終わりの幕はまだ下ろしません。最初に旅行先をSNSで決めるように、今回の旅行で撮ったSNS映えの写真を加工してSNSに投稿するのが旅行最後のステップです。生活記録のためにも、旅行に行こうとしている誰かの参考のためにも、ただ単純にいいねを押してもらうためにも、SNSに写真をあげることも三食みたいに普遍化されています。SNSで写真をあげないと、旅行した気がしない人も激増しているようですね。 笑笑

 以上、現代の若い中国人の旅行スタイルについての紹介です!参考になれば幸いです〜!(yami)

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