中華圏で増加中の「寝そべり族(躺平族)」とは?労働環境や住宅価格上昇が生んだ無欲な若者たち

コラム 台湾

中華圏で増加中の「寝そべり族(躺平族)」とは?労働環境や住宅価格上昇が生んだ無欲な若者たち

 

ここ数年、中華圏では「寝そべり族(躺平族)」という言葉を聞くようになりました。

調べたところによると、この言葉は現代社会特有の現象だそうです。

今回はこの言葉の意味を解説し、その背景にある中国社会の現状について考察していきます。

 

中華圏で増加中の若者「寝そべり族(躺平族)」とは?

中華圏で増加中の若者「寝そべり族(躺平族)」とは?

中華圏で増加中の若者「寝そべり族(躺平族)」とは?

「寝そべり族(躺平族)」はもともと中国のインターネットスラングでした。

経済力を得るための努力をせず、住宅購入、結婚、出産、競争などを放棄して無欲な生活を送る若者のことを言います。

このような無欲な状態がまるで「寝そべっている」ようであることから「寝そべり族(躺平族)」という奇妙な名前がつけられました。

寝そべり族的な生き方を求める若者は決して怠惰なわけではありません。過労や競争を避けて淡々と生きたいだけであり、仕事はほどほどにこなします。

 

中華圏で「寝そべり族(躺平族)」が増加した背景

中華圏で「寝そべり族(躺平族)」が増加した背景

中華圏で「寝そべり族(躺平族)」が増加した背景

過去、中国にある多くのテック系企業が「996仕事文化」を提唱しました。

これは「朝9時から夜9時まで働く生活を週6日送る」という意味の造語です。

このようなライフスタイルは中国の多くの若者の反感を買い、「これ以上競争の中に身を置きたくない」「仕事はするけど昇進したくない」などの感情を生み出しました。

また、こうした長時間労働だけでなく、近年の住宅価格の上昇も「寝そべり族」を生み出す要因となっています。

中国国家統計局のデータによると、2019年以前の6年間で北京の住宅価格は115%も上昇しましたが、同時期の北京人の収入はわずかに66%しか上昇しませんでした。

中国では結婚するためには住宅を買わなければいけないという考え方が根強いですが、現実はどれだけ努力しても住宅を買える状況にはならず、若者が生きる希望を失ったり努力を放棄してしまい「寝そべり族」になってしまっているのです。

 

韓国ソウルのマンション価格も上昇。韓国人は放棄を余儀なくされている。

韓国ソウルのマンション価格も上昇。韓国人は放棄することを余儀なくされている。

韓国ソウルのマンション価格も上昇。韓国人は放棄を余儀なくされている。

寝そべり族的な生き方は中国だけでなく、韓国、日本、台湾などの近隣諸国にも見られます。

韓国延世大学で学ぶ22歳の申芸琳はすでに結婚、出産、住宅購入を諦めています。住宅価格が上昇し過ぎていて、自分の経済能力ではおそらく家を買い子どもを産んで育てることはできないだろうと予測しています。

南韓国民銀行(KB Kookmin Bank)の統計によると、2021年7月、ソウルのマンション価格の中央値が10億ウォン(約1億円)を突破しました。一方、韓国の人材募集サービスIncruitの調査によると、調査対象者の7割が経済能力がなく、デート、結婚、レジャー、住宅購入のうちのどれか一つは人生で諦めないといけない状態にあることが分かりました。

 

日本のGDP、平均年収が下降。「さとり世代」が誕生。

日本のGDP、平均年収が下降。「さとり世代」が誕生。

日本のGDP、平均年収が下降。「さとり世代」が誕生。

日本には「寝そべり族」に近い言葉の「さとり世代」という言葉が存在します。

物欲が低く、憧れる対象や大きな夢がない若者で、ミニマリズムを目指す傾向があるそうです。

さとり世代の若者は仕事の待遇は悪くないものの、住宅購入や自動車購入に興味がなく、「寝そべり族」に近い価値観をもっています。

世界銀行(World Bank)によると、日本のGDP成長率は1990年には4.9%でしたが2019年には0.3%となっており、ずっと下がり続けています。また、日本人の平均年収も1992年の473万円から2018年には433万円へと下がっています。

国の経済状況から言って、さとり世代の若者は自身の給料が上がることは容易ではなく、自分のために何かをしたり経済的&物質的な報酬を受けるのは難しいと感じています。

 

台湾の住宅価格も継続的に上昇中。台湾にも「寝そべり族」が出現。

台湾の住宅価格も継続的に上昇中。台湾にも「寝そべり族」が出現。

台湾の住宅価格も継続的に上昇中。台湾にも「寝そべり族」が出現。

台湾の住宅価格も上昇し続けており、「寝そべり族」が出現しています。

中華民国内政部の調査によると、2021年第二期の全国住宅所得比は9.07倍であり、年間で0.41倍上昇しました。特に台北市、新北市、桃園市、台中市、台南市、高雄市などの都市部は住宅所得比が増加し続けています。

台湾の不動産会社「台灣房屋」の執行長・張旭嵐氏は、台湾の「寝そべり族」は以下の三種類に分けられると分析しています。

一つ目は、住宅を購入する経済力はあるけれども、経済的負担を減らすために出産数を減らしたり価格の安い住宅を購入したりするグループです。

二つ目は、住宅を購入する経済力がなく、住宅購入よりも賃貸を優先するグループです。この第二グループは資産はないけれども負債もなく、そのため「長期賃貸楽天組」などと呼ばれています。

最後の三つ目は、両親と同居しており、お金を稼いでまで住宅を購入したくないと考えているグループです。両親の庇護のもとに生活を続ける若者のことを指します。

現在、「寝そべり族」のような現象は東アジア各国に見られ、無欲で努力を放棄した若者が増えているのです。

参考記事:我不是懶只是拒絕過勞…從陸到韓日台 4數據看懂為何年輕人選擇「躺平」

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