日本は高齢社会となり久しいですが、それはお隣の台湾も同じです。
台湾は1993年に初めて65歳以上人口が総人口の7%を超え、高齢化社会となりました。
その後、65歳以上人口は増え続け、2025年には総人口の20%を超えて「超高齢社会」に突入すると言われています。
これに伴い台湾では高齢者を対象としたビジネスも伸び始めています。
ここでは台湾の高齢者人口や高齢者ビジネスの市場規模について解説していきます。
【目次】
台湾は2025年に「超高齢社会」に突入

台湾65歳以上人口の割合推移(画像元:國家發展委員會)
台湾は1993年に65歳以上人口が7%を超え「高齢化社会」になりました。
また、2018年には65歳以上人口が14%を超え「高齢社会」になりました。
そして、2025年には65歳以上人口が20%を超え「超高齢社会」になる見通しです。
中華民国(台湾)内政部の調査によると、2024年6月末時点の65歲以上人口は合計439万1,744人であり、総人口に占める割合は18.76%でした。
(そのうち、男性は45.2%、女性は54.8%)
そしてこの数字はすごいスピードで伸びており、2025年のある時点で20%を超えると予想されています。
参考資料:113年第44週內政統計通報
参考資料:超高齡社會商機破千億,新創的機會在哪裡?
高齢者関連ビジネスの市場規模
世界保健機関(WHO)の推計では、2025年における高齢者関連ビジネスの全世界の市場規模は約34兆米ドルに達するとされ、21世紀で最も有望な産業の一つとされています。EUでは、2025年までにシルバーエコノミーの規模がEU全体のGDPの31.5%を占める見込みです。シルバーエコノミーは「ヘルスケア、レジャー、文化、住環境」といった分野に集中しています。また、日本の経済産業省の推計によれば、日本のシルバーエコノミーの市場規模は約33兆円に達するとのことです。
それでは、台湾における高齢者関連ビジネスの市場規模はどれほどのものでしょうか?中華民国(台湾)内政部によると、2025年のシルバーエコノミーの市場規模は約3.6兆元(約17.1兆円)に達するとのことです。これは日本の33兆円の半分ほどの額となり、かなりの額であることが分かります。
参考資料:超高齡社會來臨 銀髮商機正夯
参考資料:台灣銀髮商機將在明年破3.6兆新台幣! 高齡產業布局的列車,你還沒跟上嗎?
台湾で伸びている高齢者ビジネス
①長期介護および養生村(健康促進村)
台湾ではすでに200以上の長期介護法人が設立されており、居住型長期介護施設は1,675カ所を超えています。また、現在設置が予定されている施設は55カ所あり、そのうち居住型長期介護施設の設置率は80.4%に達しています。なかにはすでに上場している青松健康のような法人もあり、商業研究院の支援を受けている祥寶集団、受恩、中化銀髪、佳醫集団、金色年代、崇恩なども上場を計画しています。養生村に関しては、亞洲智慧健康園区、日出不老荘園、潤福新象、長庚養生村、新板傑仕堡、楽陶居、明日葉楽活養生村、高年級俱楽部、永齢養生假期などが事業を展開しています。
②高齢者向けテクノロジー
GRAND VIEW RESEARCHの調査によると、2023年の介護支援ロボットの全世界での市場規模は11億米ドルで、2030年には29億米ドルに達し、複合年間成長率は14.8%に上ると予測されています。医療クラウドプラットフォームは、「医療」、「健康管理」、「介護」、「感染症対策」の4つの主要分野を含み、台湾の医療機器市場規模の拡大を後押ししています。
2023年、国家科学及技術委員会(台湾の行政院に属する、科学技術振興や工業の発展に関する行政を担当する機関)は「高齢者向けテクノロジー産業行動計画」を発表し、「市場経済の推進」「デジタル活用の拡大」「介護の効率向上」「高齢者生活の最適化」の4つの領域に焦点を当てるとしました。この計画には2024年から2027年の間に950億台湾ドル(約4,476億円)の予算を投入する予定です。また、2023年の高齢者向けテクノロジーの生産額が2,500億台湾ドル(約1兆1,780億円)に、2025年には3,000億台湾ドル(約1兆4,136億円)に達することを目指しています。
③健康促進
商業発展研究院(台湾の行政院に属する、ビジネスの発展に関する行政を担当する機関)の調査によると、健康促進は「健康管理」「予防保健」「ストレス管理」「体型管理」の4つの領域に分類されます。需要側のターゲット層は45~65歳の未病(サブヘルス)状態の人々であり、主なニーズは老化防止、肥満防止、ストレスと抑うつの予防、利便性とアクセスの容易さの4つがあります。
健康促進サービスにおける主要産業の収益は、2021年には新台湾ドル1,322億元(約6,229億円)に達し、2024年には1,501億元(約7,072億円)に達すると期待されています。その内訳は、運動・フィットネスが57.9%、健康管理が30.8%、食事と健康が8.6%、心の健康が2.7%を占めています。
④食品産業
世界の健康および保健栄養市場規模は8,000億米ドルを超え、毎年6%~8%の成長が見込まれています。台湾のシニア向け食品市場は、2020年から2023年にかけて毎年400億~460億台湾ドル(約1,884億円〜約2,167億円)に達しています。台湾国内のシニア向け食品市場で人気のある7つの分野として、消化器の健康、心血管の健康、関節の健康、記憶力向上、血糖値の健康、不眠症の健康、植物性米タンパクによる筋肉量の維持が挙げられます。
⑤金融保険
金融業界においては、「リバースモーゲージ(自宅を担保に生活費などを借り入れる金融商品)」、「シニア向け信託」「家族の資産承継」などがシニア市場のビジネスチャンスとして注目されています。保険業者は、「健康促進」「精密医療」「高級医療」「長期介護」の4つの分野にわたる商品を提供することが可能です。
シニア市場のビジネスチャンスにおいては、上述した長期介護や養生村、高齢者向けテクノロジー、健康促進、食品産業、そして金融保険などの分野からアプローチすることで、商機をつかむことができます。
参考資料:超高齡社會來臨 銀髮商機正夯
2024年8月、政府主催の「第一回高齢健康博覧会」が開催される
2024年8月2日から4日にかけて政府主催で「第一回高齢健康博覧会」が開催されました。
この博覧会には頼清徳総統をはじめ、様々な政府機関から多くの関係者が参加し、台湾のシルバービジネスについて展覧やスピーチが行われました。
特にこの博覧会では、①人工知能を活用した医療技術、②通信業界が手がける健康管理アプリ、③建設業者や保険業者が手がける緊急で救助や薬の調達を行うサービスの三分野が主要なテーマとして取り上げられ、関連事業の発展や連携を強めることが確認されました。
また、開会式では頼清徳総統がスピーチを行いました。頼清徳総統は過去に自身が医者だった経験があり「健康な台灣」という目標を掲げており、「健康産業が発展すれば国民が健康になり、国民が健康であれば国が強くなり、国が強くなれば世界が台灣を自然と受け入れるようになる」という考えを強調しました。
賴清徳氏は今後「3つの重点方針」を推進するとし、行政院が来年からこれを具体化すると発表しました。彼が示した3つの方針は次の通りです。
- 健康台湾深耕計画
健康保険制度を最適化し、その持続可能性を確保する。また、100億元規模の「がん新薬基金」を設立し、国家的ながん予防計画を推進する。 - 高齢者向けテクノロジー産業行動計画
科学技術を活用し業界間の提携を促進することで、高齢者向けのテクノロジー製品やサービスを普及させる。 - 台湾の科学技術力の発揮
政府はAIの基盤となるインフラ整備に投資し、スーパーコンピューターを構築する予定です。これにより、あらゆる業界がAIを活用し、産業の競争力を高めることが可能になると述べました。
参考資料:首屆高齡健康博覽會 智慧科技搶攻銀髮商機