以前の記事 “台湾高雄市長の罷免投票まとめ。実施の理由、結果予想について” にて、高雄市長罷免の理由や背景を説明しました。
その後、予定通り2020年6月6日に罷免投票が行われ、前高雄市長・韓國瑜氏の罷免が決定しました。
よって今回は、投票結果、罷免投票後の流れ、予想される社会への影響などについてまとめていきます。
【目次】
⬛︎台湾高雄市長の罷免投票の結果
<投票結果>
韓國瑜氏の罷免に同意:939,090人
韓國瑜氏の罷免に反対:25,051人
<罷免条件>
同意数が反対数を上回ること。
同意数が選挙人総数の25%を上回ること。
結果、罷免条件を大幅にクリアし、罷免決定となりました。
⬛︎罷免投票後の流れ
罷免投票後の流れは以下の通りです。
まず、罷免投票通過後、代理市長が暫定的に市長を務めます。
そして、投票から三ヶ月以内に高雄市長補欠選挙を行います。
その前に韓國瑜氏が選挙訴訟を行い勝訴となれば、韓國瑜氏は引き続き高雄市長の座に留まることができます。
韓國瑜氏が敗訴した時点で任期が二年以上残っている場合、高雄市長補欠選挙が行われます。
韓國瑜氏が敗訴した時点で任期が二年以上残っていない場合、代理市長が任期を全うします。
⬛︎高雄市長罷免の理由
韓國瑜氏が罷免になった理由としてよく挙げられるのが「親中国的な政策が市民に受け入れられなかった」というものです。
これは間違いではありません。
しかし、台湾現地メディアはこれに加えてもう一歩進んだ分析をしています。
例えば、台湾メディアNownewsは以下のように分析しています。
①:政治責任を全うせず、信用を失ったため
韓國瑜氏は高雄市長就任から一年も経たないうちに、三ヶ月の休暇を申請し、2020年の総統選挙に挑みました。
このため、市政總執詢や預算交付に参加せず、投票者たちの反感を買うことになりました。
また、石油採掘、競馬場の開設、アーノルドシュワルツェネガー氏の講演会などは予算面からみて問題があり、市民から不信感を持たれるようになりました。
②:韓國瑜氏による市政への満足度が低下したため
「韓國瑜就職周年滿意度調查」によると、韓國瑜氏による市政に対し満足と答えた市民はわずかに33.9%のみでした。
合計で57.7%の市民が不満と答え、そのうち39.3%が非常に不満足と回答しています。
また、市長の市政に点数をつけた場合、24.8%の市民がゼロ点と回答しており、合格点を与えたものは15.9%のみで、平均点は31点となりました。
③:総統選挙のために市政が停止させられたため
韓國瑜氏は総統選挙のために、觀光局長の潘恆旭氏や新聞局長の王淺秋氏を連れ出し、社會局長の葉壽山氏や主秘の高美蘭氏も職務を全うせずに離れてしまいました。
高雄市長に就任して一年も経たないうちに、総統選挙立候補のために高雄市の局処首長のポストがガラガラになってしまい、市民からの反感を買うことになりました。
④:赤色メディアの介入により韓流が捏造されたと分かったため
赤色メディア(紅媒)とは、中国の資本が入り、中国寄りの報道をするようになったメディアのことです。
韓流とは、2018年高雄市長選挙の際に大人気となった韓國瑜氏ブームのことを指します。
赤色メディアの介入により韓流が捏造されたものということが分かり、それにより韓國瑜氏の人気が落ちました。
⑤:韓國瑜氏の言動が高雄市のイメージを壊したため
韓國瑜氏はしばしば言葉遣いや用いる語彙が適切ではないとして話題になっています。
このほか、性差別や国籍差別をするような発言もあり、これが高雄市のイメージを大きく下げてきました。
⬛︎高雄市長罷免による社会への影響
総統選敗北や高雄市長罷免などにより、国民党(最大野党)の勢いは弱まっています。
これにより、高雄市長補欠選挙は民進党(現与党)に有利になったと言われています。
この流れが続けば、台湾政府は親米・親日的な政策をとり続けることになります。
現職の蔡英文総統の政策については、以下の記事に詳細をまとめています。
参考までに、ぜひご一読ください。
→2020年台湾総統選挙の結果と、今後4年間の台湾の方向について
参考記事(中国語)