日本私立学校振興・共済事業団は、2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」の調査結果を発表しました。(詳細はこちらのPDFファイルを御覧ください。)
今回はこの調査結果からポイントなるところをいくつかご紹介したいと思います。
■私立大学の定員割れは「44.5%」
日本国内の各私立大学において、設定されている定員数に対し、入学者数がどの程度いたかを表す「定員充足率」という数値があります。
上記資料では細かく出ているのですが、それを「定員充足率100%以上」と「定員充足率100%未満」の2つを5年単位にまとめたグラフがこちらです。
※参考:日本私立学校振興・共済事業団の2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」を元に弊社作成
少子化が叫ばれて久しいですが、現在も私立大学の数は増え続けており、それに伴い、定員充足率が100%未満の私立大学、つまり「定員割れ」を起こしている大学の数も増えてきている傾向が読み取れます。
こちらのグラフを比率で表したグラフがこちらです。
※参考:日本私立学校振興・共済事業団の2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」を元に弊社作成
大学の数が現在と同規模の数になった「平成15年度」から、定員割れをする大学が大きく割合を増やし、平成20年度からは40%台をキープしています。
昨年度である平成28年度は、実に44.5%の私立大学が定員割れになっているのが分かります。
さらにもう少し細かく充足率を見ていきましょう。
※参考:日本私立学校振興・共済事業団の2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」を元に弊社作成
充足率が「70%未満」の私立大学が長らく10%以上あることが分かります。
相対的に「100%以上130%未満」の大学も減ってきおり、「130%以上」という大学に関してはほぼ皆無になってきています。
定員「130%以上」の大学が大きく減ってきているのは、一部の大学への集中を抑制するために国からの助成金を減らすなどの取組成果などが関係していると思います。
ただ、定員充足率70%未満が10%以上あり、定員充足率100%未満が44.5%と約半数あるということは、需要と供給のバランスがあっていない状況と言えるでしょう。
■エリア別に見た学生確保の深刻度
上述の日本私立学校振興・共済事業団が発表した「私立大学・短期大学等入学志願動向」にエリア別に見た志願倍率や入学定員充足率をグラフ化したものがあります。
※参考:日本私立学校振興・共済事業団の2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」より抜粋
こちらを見ると、志願倍率と定員充足率共に低いのが「東北(宮城県を除く)」と「四国」の2つのエリアであることが分かります。
この2つのエリアについて、もう少し詳細なグラフを見てみましょう。
※参考:日本私立学校振興・共済事業団の2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」より抜粋
ここ5年間の推移を見ると、「東北(宮城県を除く)」は充足率が漸増傾向、「四国」は充足率に漸減傾向が見られます。
■別の指標でエリア別の人気度、深刻度を計測してみる
上述の「私立大学・短期大学入学志願動向」の結果から、「志願倍率」と「定員充足率」の2つの指標が人気度や深刻度を表す目安となりそうというのが分かります。
ただ2つの指標があるため、これを1つの指標にし、もう少し分かりやすくしてみようと思います。
仮に「入学志願度」という指標名にして計算してみましょう。計算式は以下です。
入学志願度=√「志願倍率」×「定員充足率」
また、「平成28年度」から「平成27年度」の入学志願度を引いたものを「変動値」とし、計算した結果は以下です。
入学志願度と変動値
※参考:日本私立学校振興・共済事業団の2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」を元に弊社作成
入学志願度をグラフ化したものが以下です。
※参考:日本私立学校振興・共済事業団の2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」を元に弊社作成
これを見ると、充足率が100%前後以上でかつ出願倍率が6倍以上あるところは指標として「25ポイント」以上になりそうです。
これは人気エリアを表す指標になりそうな印象です。
「20ポイント以上」から「25ポイント未満」も当面は大幅な定員割れはなさそうな印象を受けます。
また、変動値をグラフ化したものは以下です。
※参考:日本私立学校振興・共済事業団の2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」を元に弊社作成
2つの指標を1つの指標にしたことにより、変化を見てみました。
それによると、どうやら「千葉県」が平成27年度から平成28年度にかけて、大きく人気を集めたようです。
千葉県の経年の詳細数値を見てみます。
※参考:日本私立学校振興・共済事業団の2016(平成28)年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」より抜粋
定員充足率がほぼ100%になり、かつ志願倍率が大きく増えているのが見て取れます。
逆に下がっているところを見てみると、「北陸(-0.66)」「中国(-0.62)」「東海(-0.60)」が少し目立つようです。ただ、変動値が小さいため、概ね前年並み、若干倍率や充足率が下がった、という程度かと思います。
一つの数字あそびではありますが、このような指標を見てみることで、エリア別の大学入学に関する人気度を経年で見ていくことで、大きなトレンドを掴むことも可能かと思います。
各都道府県別、大学別にこのような指標を当ててみると、もう少しリアルな状況が分かってくるかと思います。
また、冒頭にありましたように、現状では定員割れ大学数が44.5%あり、あきらかに需要と供給があっていない状況に見受けられます。
各学校法人様の取り組みとしては、社会人向けカリキュラムの開設等、従来の学生とは違う層の顧客化が必須と言えるでしょう。
他には海外からの私費留学生の顧客化、というのも大きな柱になってくるかと思います。
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