コロナが流行し、海外旅行ができなくなって半年が経とうとしています。
この半年間、各国の旅行業界は大きな変化を経験してきました。
今回は台湾の旅行業界にスポットをあて、売上や施策などの変化をご紹介します。
【目次】
台湾の旅行業界の売上の変化(2020年8月と2019年8月の比較)
上は台湾の大手旅行代理店6社の2020年8月の売上と2019年8月の売上を比較した表です。(千元省略)
業界全体的に売上が8割〜9割程度減少しており、中でも五福は94.97%減であり、大手6社の中では最大の落ち込みとなりました。
「雄獅旅行社」の2020年8月の売上は約4億元であり、業界最大手ですが、去年8月と比べて83.32%の下落となっています。
一方、易飛網はもともと台湾内の旅行に特化していたため、売上は25.84%しか減少していません。
結果、易飛網は小規模な企業ながらも、現在は一時的に業界二位の売上となっています。
業界最大手の「雄獅旅行社」、2020年8月は2020年7月比で売上2倍に
業界最大手「雄獅旅行社」の2020年8月の売上高は約4億元でした。
これは一ヶ月前の2020年7月と比較して2倍の数字となります。
つまり、コロナ禍にありながらこの1ヶ月で急速な回復を見せたというわけです。
売上が急速に回復した理由はいくつかあります。
まず、台湾内でのコロナ対策が成功し、夏休み需要が生まれたこと。
次に、このタイミングで政府が旅行補助を出したこと。(後述します)
さらに、雄獅旅行社はコロナの影響が出始めた春から、台湾を5つの地域に分けてマネージャーを再配備し、台湾内の旅行担当を以前の5倍に増やすなど、台湾内旅行に特化するよう社内体制の改革も進めてきたことも挙げられます。
これに付随し、中華民国(台湾)内にある金門島・媽祖列島、澎湖諸島など離島地域への大型クルーズの旅も企画し、8月は8500万元を売り上げ、会社全体の売上の2割を占めるなど、人気ツアーの開発にも成功しています。
これはどの国も同じでしょうが、海外旅行ができない以上、国内旅行に舵を切るしかないです。
台湾の旅行業界、売上が回復するも規模の縮小は免れない
コロナ対策、夏休み需要、政府の旅行補助などにより、旅行会社の業績は徐々に回復しています。
しかし、それでもコロナ禍前と比べると売上は低く、規模の縮小(リストラ)は免れない状態です。
中華民国交通部観光局によると、2019年は合計で43の旅行会社が解散しましたが、2020年は9月現在で48社が解散しています。
ダメージが比較的少ない易飛網も17店舗から10店舗に縮小しており、お土産の販売するなど収益構造を変えています。
業界最大手の雄獅旅行社は現段階で台湾内の80店舗のうち12店舗を閉めており、年末までに合計で50店舗になるよう引き続き規模を縮小させていくようです。
また、雄獅旅行社はこれまで維持コストの高い大都市圏に店舗を集中させていましたが、今後は集集や埔里など観光地から近い郊外に店舗をオープンさせ、維持コストを下げつつ旅行関連商品の販売に力を入れます。
他、大手旅行会社の一つである鳳凰は、2020年10月に新しいコンセプトのフィットネスクラブをオープンさせます。
一般的な月額会員制ではなく、プライベートな空間を提供し1時間で4名しか予約を受け付けないというシステムです。
文章中ではこうしたシステムにする意図は述べられていませんが、コロナ時代にマッチしたシステムなのかもしれません。
台湾の旅行業界、2020年9月以降はどうなる?旅行補助でしばらく安泰か?
台湾政府は2020年7月1日より「安心旅遊國旅補助方案」という旅行補助を提供しています。
使用期限は2020年10月31日までであり、台湾籍限定、平日も休日も適用できます。
内容は、団体旅行費、フリープランの宿泊費、各種施設の入場料、観光バス代、地方政府が主催するイベントの参加費などに対する補助であり、好きなものを選ぶことができます。
具体的には、フリープランの宿泊費に関しては1人につき1泊限定で1000元分の補助が与えられ、各種施設の入場料に関しては政府指定の22の遊園地や植物園などの入場料が無料になります。
インターネットで申請し、旅行先で身分証を提示するだけでOKです。この通り手続きは簡単です。
期限は2020年10月31日までなので、それまでの間は旅行需要は冷めないでしょう。
ただ、11月以降は旅行補助がなくなりますし、海外との往来が再開される可能性もまだまだ低いです。
旅行業界にとっては安心できない状況が続くことでしょう。