コストコ(costco)はアメリカ発の会員制大型スーパーマーケットです。
2022年6月時点で世界に833店舗あり、台湾には14店舗、日本には31店舗あります。
台湾は人口が日本の5分の1ほどであり、面積が日本の10分の1にすぎません。
このとおり台湾は小さいですが、コストコの店舗数は日本の半数に迫る勢いです。
なぜ台湾のコストコは店舗数がこんなにも多いのでしょうか?
その答えはシンプルで、コストコは台湾で大人気だからです。
台湾にはイオンのような大型スーパーマーケットチェーンが少ないというのも理由の一つかもしれません。
それ以外で言うと、コストコは台湾人の生活スタイルや志向にマッチしているからという理由もあるでしょう。
というわけで今回はコストコが台湾で人気の秘密に迫りたいと思います。
【目次】
台湾でコストコはどのくらい人気なのか?
コストコのアジア店舗売上トップ5のうち台湾の店舗が3つを占めています。
またコストコ台湾の会員更新率は95%と高く、他のアジアの会員更新率の平均 90% を上回っています。
さらにアジア店舗売上1位の台中店と2位の内湖店はすでに年間売上高が100億元を超えています。
1店舗当たりの売上高に関しては、台湾はアジアで断トツの1位となっているのです。
コロナ期間中にはコストコ台湾は20%以上の成長率を達成しました。
コロナが最も深刻だった2020年と2021年の売上はそれぞれ1000億元と1200億元近くを超えていたのです。
現在、台湾の顧客あたりの単価は約100米ドルであり、これは米国平均に相当します。
年間利益は50億元を超え、米国本社の幹部が現場視察のため台湾を訪れるほどの事態となっています。
(2022年8月現在、1台湾元=約4.5円)
なぜコストコは台湾で大成功を収めることができたのか?
今回参考にした記事(好市多亞洲獲利前5名 台灣占3個!張嗣漢:大家都很好奇 為何可以做到這麼大數字)で、コストコアジアパシフィック地区社長の張嗣漢氏は以下三つが台湾市場での成功の鍵だと述べています。
成功の鍵①:明確なポジショニング
コストコのポジショニングは非常に明確です。
多くの消費者はコストコを思い浮かべると、主に輸入品とプライベートブランドを販売していることをすぐに連想します。
台湾とアメリカの間には非常に密接なつながりがあり、留学、移民、親戚訪問、観光ツアーなどを通して多くの台湾人が米国製品に親しみを持っています。
成功の鍵②:他店との差別化
コストコは「安くて使いやすく、他の店では買うことができない」を意識してきました。
粗利率は 14% を超えないように設定し、自社ブランド”カークランド”の製品に至っても粗利率はせいぜい15% にすぎません。
店舗に併設されたコストコガソリンスタンドの料金はリッターあたり他の店舗よりも2〜4元安く設定しています。
このガソリンスタンドではクレジットカードで支払うとさらに1%が還元される仕組みになっています。
店舗には、薬局、聴覚センター、メガネ部門、ブティック部門なども併設しており、ガソリンや薬局のついでにスーパーで買い物をする客も少なくありません。
成功の鍵③:規律の維持
店舗のバックオフィスはかなり簡素な作りになっています。
コスト削減を徹底し客に見せる必要がない部分にはお金をかけません。
広告費もかけておらずプロモーションといえば既存会員へのメール通知やアプリでの告知程度しか行いません。
来店を促すことを主な目的としたオンラインショップも運営しています。
オンラインショップには実際の店舗でないと購入できない商品も表示しています。
「この商品は店舗でお買い求めください」と記載し、実店舗への来店を促しているのです。
このようにしてオンラインとオフラインが両輪のように回るよう設計しています。
台湾在住者目線でのコストコ成功の理由(筆者の感想)
この段落は当記事の筆者の感想なので参考程度に読み進めていただけると幸いです。
私は長年台湾に住んでいますが、台湾人を見ていて「家庭でストックする食料品の量が非常に多い」と感じます。
台湾家庭の冷蔵庫を見ると本当にこれでもかというほどに食料が詰め込まれています。
家族全員でも食べきれない量をストックしており私は台湾人は計画性がないのではないかと長年勘違いしていました。
しかしよく話を聞いてみると、わざと食べきれない量の食材をストックしていると言うのです。
迷信的な話になってしまいますが、台湾には冷蔵庫が空だと将来的に食いっぱぐれるという考え方があるそうです。
よって冷蔵庫は常に満タンにしておくという習慣が一部の家庭にあります。
また、そもそも台湾人は日本人よりも食に対する関心が高く食べる量が多いのも事実です。
豊富な経験を携えて台湾にやってきた下町董事長が、台湾のアウトレットパーク開業後に最も驚いたのは、「台湾人の食への熱意」だという。日台の消費者行動の違いを目の当たりにした三井アウトレットパークは、すぐに台湾市場に合わせた戦略をとった。
下町董事長は、日本人にとっての外食は一種の贅沢であると話す。一方、台湾には朝食から外食をする習慣があり、日本人とは外食に対する意識に差があると言えるだろう。そのため、三井アウトレットパークでは客単価と飲食店の比率の設定に大変苦労したという。
このとおり台湾三井不動産の社長も台湾人の食に対する熱意に驚いています。
実際、台湾の街には食べ放題店が溢れ、いつでも食べ物を買うことができるよう屋台やコンビニも林立しています。
このような理由で、台湾人は安く大量に購入できる卸売小売店コストコに押しかけ、日本の一般家庭の感覚では理解できない量の食材を購入し、これが売上アップにつながっていると推測します。
コストコ台湾、今後の展望は?
参考記事によるとコストコ台湾は今後さらに店舗を増やす予定のようです。
台湾の人口やニーズから分析したところ、現在の14店舗から合計25店舗まで増やせる可能性を秘めているとのことです。
人口が5倍多い日本で31店舗なので台湾で25店舗がどれほど多いかが分かるでしょう。
また、アメリカ本部は上海と蘇州にて最初の中国店舗をオープンさせ、台湾で優秀な業績を収める台湾人社員60名に経営を任せました。
2022年後半には中国大陸地区にて追加で4店舗をオープンさせる予定であり、台湾での成功例をもとに中国市場進出を狙っています。