中国コスメ市場とコスメ製品から見る「Made in China」の実情

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 単刀直入に聞きますが、「Made in China」に対して、マイナスなイメージを持つ方はどれくらいいますか。もしかしたら、コラムを見ているあなたは今、頷いていませんか。確かに、中国製商品と言ったら、「パクリ、安い、壊れやすい」など、「Made in China」に対する評価が概して厳しいだと言えるのでしょう。しかし、よく考えてみれば、日本で売られている商品の中国製率が決して低くないはずなのではないでしょうか。今周りの雑貨や電気製品、ファッショングッズ、日用品を見てみると、意外と多くのものは「Made in China」ではありませんか。もちろん、昔の中国製商品は安くて壊れやすいものだったかもしれませんが、今の「Made in China」という中国製造技術が徐々に世界に認められるようになっていることに気付いている人は、どれくらいいるでしょうか。「Made in Japan」という高品質で有名な製品に親しむ日本人はまだ気づいていないかもしれませんが、現在の中国人はそれに気づいています。

 これからは中国コスメ市場の現状を例に、「Made in China」に対する既存のイメージを覆させようとする、現在の中国を詳しく見てみたいと思います。よろしかったら、最後までご覧いただければ幸いです。

2020年「ダブルイレブン」から見る中国コスメ現状

 まず、本題に入る前に、中国コスメ現状を説明したいと思います。今回、中国コスメ市場を説明するにあたって、みんなに見ていただきたいデータがあります。それは、2019年および、2020年の「ダブルイレブン(※)」における、最も売れた中国コスメのTOP.30のブランド一覧になります。以下の図をご覧ください。
※ダブルイレブン=11月11日に行われる中国最大のネットセールイベント

「2020年ダブルイレブン・コスメ売上高TOP.30」
https://www.douban.com/group/topic/200886866/
参照日:2020/11/27 (以下同様)

 
以上の図からもわかるように、「ダブルイレブン・コスメ売上高TOP.30」にランキングインしたブランドを国別で確認すると、中国のブランドとフランスのブランドが並んで、もっとも多くの7ブランドがランクインしてあり、ほぼ4分の1を占めました。そのほかは、アメリカ/6、日本/5、韓国/3、カナダ/1、イタリア/1、という結果になりました。
 
 また、2019年のダブルイレブンのコスメ売上高に関するデータと比較して見たいと思います。

 2019年と2020年ともにに「売上高TOP.30」にランキングインした中国のコスメブランドは同じ7つではありますが、ブランドの入れ替えが激しいことが見受けられます。それはなぜかと言うと、近年中国製造業の新しいトレンドとしては、量だけでなく、高品質な中国ならではの商品が新しく生まれていることにあります。

 例えば、「花西子(Florasis/ファーシーズ)」という2017年に中国杭州市で誕生したコスメブランドがあります。「花西子」は2019年のダブルイレブンでは、TOP.30内にすら入っていませんでしたが、2020年には15位まで上昇し、さらに日本進出も遂げ、日中SNSで話題になりました。二年間でここまで成長できたのは、一体どこが優れているのでしょう、と皆さんは疑問に思いませんか。おそらく、その原因は「花西子」というブランド名から、商品のデザインなど、細部まで「中国伝統」の特徴そのものを余すところなく表現を徹底したところにあるのではないかと考えられます。ブランド名である「花西子」の「花」は「以花養妆(直訳:花でメイクを滋養する)」という意味で、つまり、天然のフラワーエキスを原材料として使用し、アジア人の肌質に合う商品であることを指します。一方、「西子」はブランド製造地杭州にある「西湖」の別名であることと、古代中国の四大美人の中に、最も美しい人である「西施」をも指し、その由来は蘇東坡という中国古代の有名詩人の「欲把西湖比西子,淡妝濃抹総相宜/訳文:西湖を(当地出身の美女である)西施と比較しようとすれば、薄化粧も厚化粧もいずれもよく似合っており、素晴らしい。(ウィキペディアより)」というコスメ製品・ブランド発祥の地・歴史が幾重にも折り重なり中国人にとって、とても魅力的に映るからです。

「花西子」公式Twitterより(2020/12/3)

 続いて、「花西子」のコスメを見てみると、繊細で美しい彫刻入りのリップ、発色が抜群で色展開も豊富な彫刻アイシャドウパレット「百鳥朝鳳」、さらに最近発売したばかりの、「中国のミャオ族の銀の装飾品からインスピレーションを得てつくられたコスメ(「花西子」公式Twitterより)も中国で爆発的な人気を集めています。「民族美こそ世界美である」、「花西子」は東洋の美学を世界に示しました。

「花西子×人気歌手周深×花西子専属モデル」MV

 品質が高いだけでなく、見た目のインパクトもあって、さらに、ブランド名やデザインなど、すべてのところに「Made in China」が刻まれています。その上、中国の伝統文化と現代ファッションを合わせて作られた「花西子」は人気が出るべくして出た、と言っても過言ではありません。
このように、中国のコスメ市場に、いま大きな変化が生じています。それは何かと言うと、これまで、欧米や日韓のブランドが中心だった中国コスメ市場において、海外商品の人気が減少傾向になり、中国ブランドのコスメを多く目にするようになったのです。現在の中国では「Made in China」がトレンドになり、台頭する中国ブランドの圧倒的な勢いが、上述したことからおわかりいただけましたでしょうか。

中国コスメの日本進出

 中華メイク・チャイナコスメなど日本SNSで話題となったこと、もう珍しいニュースではないので、皆さんもご存知かと思います。その人気のあまりに、中国ブランドのコスメをLoftや多くの店舗でも簡単に買えるようになりました。ここでは簡単に紹介していきたいと思います。

1)花西子
2)Perfect Diary
3)花知晓
4)ZEESEA
5)CATKIN

①花西子

 「花西子」に関しては、先ほど詳しく紹介させていただいたため、ここは文字ではなく、皆さんに画像を見ていただきたいと思います。

「同心鎖リップ」(男女の心をつなぎとめる鍵)」
天猫公式サイトより(2020/12/3)
https://huazhixiao.world.tmall.com/

②Perfect Diary

 中国では、最もメジャーなブランドであり、今年のダブルイレブンのコスメ売上高ランキングのTOP.13になります。新宿のウエルシア薬局でもPerfect Diaryのパックが買えるようになりました。

クリスマス限定セット(写真:天猫公式サイトより2020/12/3)以下同様
https://perfectdiary.world.tmall.com/


大人気の「Animal Eyeshadow Series」
アーティスティックなパッケージが注目

③花知晓

 このブランドの特徴として、乙女心をくすぐるところです。あまりにもスウィートで、JKの間では大人気です!

「Love Bear Series」(写真:天猫公式サイトより2020/12/3)以下同様https://huazhixiao.world.tmall.com/


「Angel Series」

④ZEESEA

 大英博物館とのコラボパッケージの商品、ピカソの絵をパッケージに使用するなど、美術作品系との大胆なコラボレーションが数多くあります。特に最近人気なのは、不思議の国のアリスシリーズです。

「大英博物館シリーズ」(写真:天猫公式サイトより2020/12/3)
https://zeesea.world.tmall.com/以下同様

日本で話題のマスカラ

「アリスシリーズ」

⑤CATKIN

 華やかなパッケージが特徴的な大人気中国コスメ、CATKINは日本上陸を果たしました。東洋の美を映す芸術コスメ!取り扱い店舗もこの最近増えているほど人気です。

写真:CATKIN公式サイトより(2020/12/6)
https://catkin.world.tmall.com/

 まだ紹介しきれない人気の中国コスメもたくさんありますが、「Made in China」は百均や電気製品などにとどまらず、コスメなどを始めもっと広い分野でも、日本に溶け込んでいる事実は否定できないでしょう。

「Made in China」のイメチェン

上述した話を踏まえて、ここからは中国ブランドが数年間という短い間で「Made in China」の既存のマイナスイメージに対するイメチェンを成功させつつある要因について、簡潔に分析してみたいと思います。
 
 まず、本題に入る前に、ちょっとだけ雑談をさせていただきます。2015年に、中国人観光客がわざわざ日本に来て、便座を買って帰ったことがニュースになったことを、皆さんまだ覚えていますでしょうか。それは、ただ国内外の価格差があるというよく言われる理由だけでなく、そこにもっと深層的な理由がほかにあります。それは、当時の人々が「国貨」(中国製商品)に対する不信感が強いところにあります。「国貨」は愛国主義と民族主義の延長線上にある概念として、約100年以上の歴史を持っています。しかし、この100年のうちの大半において、中国と世界の国力の激しい差により、「国貨」に対しても、旧派、安価、脆弱などのようなマイナスの評価しか当時はありませんでした。当然のこと、海外製品が当時の主流になり、海外製品崇拝が一種の社会的現象となりました。
 
 しかし、今となって、それはもう過去の話となりました。中国は、今でも前を向いて変わっていきます。その大きく変わった部分は、「Made in China」のイメチェンに繋がっています。今回は4つについて説明させていただきます。
 
 まず、1つ目は中国の国際競争力の向上です。中国は米誌「USニューズ&ワールドレポート」が発表した世界で最も「強い」国のランキングの中に、アメリカとロシアなどの先進国と上位を維持するほど強い国際競争力を持っています。かつて、中国メーカーは安価商品を利用して世界市場に進出しましたが、現在では、精良で高品質な商品の製造に注力しています。言い換えると、「Made in China」はもう粗製乱造の代名詞ではなくなり、現在の中国はいい製品も作ります、そして作れます。

 また、2つ目は、中国国民の経済力の向上と中国人消費者が中国ブランドに自信を持つようになったからです。経済力の一人当たりの収入の上昇により、昔の衣食をメインとする消費理念は、現在の品質と文化を追求する消費理念に変わりつつあります。また、高品質で高価な海外商品は昔の中国人にとって、極めて珍しいものだと言ってもいいでしょう。しかし、グローバル化により、海外との繋がりがより親密になり、海外商品を手に入れることも簡単になりました。特に今時の20代〜30代の若者にとって、iphoneやスタバなどと言った国際的ブランドは高嶺の花ではなく、あくまでも生活のごく一部にすぎません。ゆえに、「海外商品の持ち主=お金持ち、あるいは社会地位の高い人」という考え方は、現在通用できなくなりました。一方、中国ブランドに関して、品質やデザインなど、あらゆる方面から見ても、決して海外商品より劣化しているとは限りません。そのため、かつての「海外商品が高くて買えない/入手方法がわからないから、仕方なく中国製品を買う」が、現在の「中国製品が素晴らしいから、海外商品の代わりに使っている」に変わりつつあり、海外商品の中国市場シェアが徐々に減少していくことも理解できなくはないでしょう。
 
 さらに3つ目、自国ブランドの商品を購入する行為は愛国行為だ、という考え方が中国のトレンドである、ということです。愛国心や理想主義により、自国ブランドを購入する中国人消費者は増えています。いうまでないが、自国ブランドの商品を購入することは、自国の経済発展に直接に貢献することになります。国の競争力をさらに向上させるのに、国民一人一人の力が必要であるため、まず国民からが自国ブランドの商品を心から愛さなければいけません。多少理屈っぽく見えますが、そう思っている人は決して少なくありません。
 
 最後の4つ目は、中国ブランドの研究開発の実力および、映画・ドラマなどメディアの活用です。今回のコラムはコスメしか触れていませんが、売上高ランキングにおける中国ブランドの入れ替えからもわかるように、中国という巨大で複雑な市場に対して深い理解を持っている新しいブランドがどんどん開発されています。また、古典と現代とのコラボレーションなどにより、伝統という古臭いイメージを逆転させ、そのギャップ萌えで、数多くの中国人若者だけでなく日本人、さらに世界中の人を魅了しました。中国の魅力を多角的・立体的に世界中の人々に発信しようと思っている中国ブランドは、ただいま新風を巻き起こしています。それに加え、映画・ドラマ・ECライブ配信などメディアの活用で、中国ブランドの宣伝を有効的に行い、消費者の購買行動を促し、マーケティング手段を向上させました。

まとめ

 「Made in China」に対する既存のイメージを覆し、そして顕著な効果を実現したのは、中国の主席や大勢のお偉いさんの努力だけではありません。その多くの力を発揮したのは、中国の国民一人一人です。彼らは中国を信じてそして自分自身を信じて、「Made in China」の実力に気付き、自発的に「中国」を発信しようとしているからです。もちろん、まだまだ発展途上国である中国と比べたら、「Made in Japan」の方が圧倒的に高品質かつ安全であるでしょうが、「Made in China」はもはや昔の「Made in China」 ではなくなり、「Made in Japan」のブランド力との差は縮まっているのは明らかです。高品質かつ比較的に安価な商品を作る中国は、価格における競争力に関しては、「Made in Japan」が敵わないのではないでしょうか。これから、中国国民の力を合わせていっている中国は、さらに中国ブランドで「Made in China」を一段とプラスにイメチェンして世界に売り出すのではないかと思います。みんなで一緒に期待しましょう。

 最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。少しでもご参考になれましたら、幸いです。では、また〜!(yami)

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