台湾は2022年10月13日に入国者の隔離を撤廃しました。
しかし、外国人旅行者は順調に増加していません。
今回は隔離撤廃後の台湾インバウンド及びアウトバウンドの状況、課題点、プロモーション戦略などについて整理してみました。
【目次】
隔離撤廃後、伸び悩む台湾のインバウンド業界
中華民国(台湾)交通部観光局によると、2022年10月の入国者数は93,206人であり、2022年9月の入国者数は68,318人でした。
10月13日の隔離撤廃を境に10月と9月で24,888人も増加しており、その後も緩やかな増加傾向にあります。
しかし、10月の入国者93,206人のうち51,027人が東南アジアからの入国であり、これは主に老人介護や工場労働の目的での入国だと考えられます。(台湾では多くの東南アジア人がこれらの仕事に従事している。)
また、欧米からの入国者も伸びていますが、実際は台湾系移民による帰省の割合が多いという調査もあり、純粋な旅行者が増えている訳ではないと考えられます。
ほか、10月は入国者93,206人に対し出国者が172,319人、9月は入国者68,318人に対し出国者が126,864人であり、海外旅行を楽しむ台湾人が台湾を旅行する外国人の約2倍となっています。
これらのデータを見るとまだまだ台湾旅行を楽しむ外国人が本格的に増加しているとは言えません。
参考記事:解封後多2.4萬人入境!觀光局:今年目標70萬人 年底可達標
春節期間は合計で延べ72万人が出入国!順調な台湾アウトバウンド業界
2023年は春節休みが10日間あり、この期間の合計出入国者数は延べ72万人にのぼりました。
出入国者数が最も多かった日は1/28であり、この日の出入国者数は延べ84,968人でした。
また、桃園国際空港における1/19から1/26の一日平均旅客数は延べ7.1万人であり、去年同時期に比べて27倍増となりました。
春節後のデータは見つかりませんでしたが、台湾現地ではこれから海外旅行をするという人の話をちらほら聞きます。
台湾のアウトバウンドは復活しつつあると言えるでしょう。
台湾インバウンドが復活しない理由と課題点
なぜ台湾を旅行する外国人が増えないのか?
10/13の隔離撤廃以降、多くの関係者がこの問題について議論しています。
理由①:割高な為替レート
まず考えられるのが台湾ドルのレートの高さです。
2022年は米ドルのレートが各国の通貨に対し上がり続けた一年でした。
もちろん台湾ドルも米ドルに対して下がりましたが、各国の通貨に対しては下がりませんでした。
上の画像をご覧いただくと、ここ最近の台湾ドルがいかに強いかが分かると思います。
現在の台湾ドルは過去20年間でかなりの高値水準にあります。
つまり、どの国の人から見ても台湾の物価が高く感じるということです。
理由②:高い割にクオリティが低い旅行商品
先日ある台湾メディアに以下の記事が投稿されていました。
この記事によると、2022年の台湾の観光宿泊施設の1泊あたりの平均価格は4,195元であり、これは過去最高だそうです。
2023年2月現在のレートで換算すると、4,195元は日本円で約18,500円です。
日本で18,500円というとそこそこ良いランクのホテルです。少なくとも安宿ではありません。
台湾は物価と人件費が毎年のようにじりじり上がっており、また現在はレートがかなり高いこともあり、様々なサービスが旅行者にとってかなり高く感じます。
また、値段が高いだけでなく、値段が高い割にはクオリティが低く(清潔でない、設備が古い、など)、日本のような近隣諸国と比較すると割高感が否めません。
実際、台湾人は国内旅行を避けて割安で高品質な日本へ行きますし、その他の国の人に関しても「地理的にほぼ同じ位置なら日本を選ぼう」となっているかもしれません。
理由③:大手英語メディアが台湾の劣悪な交通事情を報道
2022年12月には米国の大手ニュースメディアCNNが「Taiwan’s ‘living hell’ traffic is a tourism problem, say critics(台湾は歩行者にとって地獄)」という記事にて台湾の劣悪な交通状況を報道しました。
台湾の交通事故死亡率は日本の約5〜6倍高くであり、多くの先進国の数字を上回っています。
台湾の劣悪な交通事情が大手英語メディアで拡散されたことが外国人旅行者の心理に影響を与えたのではないかと台湾の識者は述べています。
→これに対し現在台湾政府は交通ルールを強化したり罰金を厳しくするなど対策を進めています。
理由④:主要な訪台客である日本人が減少
日本人は帰国時にワクチン接種証明の提出が必要であり、ワクチンを接種していない者は72時間以内の陰性証明が必要です。
(現在は多くの国がワクチン接種証明や陰性証明の提出を撤廃している)
これにより海外旅行をためらっている日本人がたくさんいると考えられます。
コロナ前(2019年)、日本人は訪台外国人数第二位であり、年間217万人が訪れていました。
これは台湾全体の約20%を占めていました。
主要国の一つである日本人が減っているということで、全体の数字に大きな影響を与えてしまっています。
外国人旅行者増加に向けたプロモーション戦略
対香港・マカオ
中華民国(台湾)陸委會は、2/20より香港・マカオ地区の住民の台湾自由旅行を解禁することを発表しました。
コロナ前(2019年)、香港人とマカオ人は訪台外国人数三位であり、年間175.8万人が訪れていました。
香港人やマカオ人は言葉の壁がないため自由旅行がメインとなります。
よって今回の自由旅行解禁により訪問者数増加が見込めます。
旅行商品予約プラットフォームのKlookによると、香港とマカオからの台湾関連旅行商品の検索数が以前の2.5倍に増えています。
その内容は主に、宿泊施設予約、レンタカー予約、新幹線予約などです。
これに合わせて台湾の旅行業者は香港人及びマカオ人に合わせた旅行商品を増やすなどプロモーションに力を入れています。
参考記事:2/20重迎港澳自由行旅客! 觀光局統計:疫情前來台第3名
対タイ
コロナ前、2016年から2019年にかけてタイ人の台湾入国者数は17万人から41万人へと激増しました。
これは決して少なくない数字であり、台湾観光業界は今後もタイへのプロモーションを強化していく予定です。
2022年12月、台湾はタイを訪問し政府観光庁(TAT)と交流及び意見交換を行い、お互いの観光業の発展において協力することを確認しました。
また、2023年2月にはタイ国政府観光庁(TAT)が台湾を訪問して意見交換を行っています。
参考記事:台泰交流迎春暖 開啟觀光新篇章
対日本
調査によると2019年に訪台日本人217万人のうち6万人が教育関連旅行(修学旅行など)でした。
6万人は少ない数字ですが、教育旅行は一度決定すると2〜3年は同じ場所に行くことが多く、特別な要因以外では簡単に変更されません。
また、中華民国(台湾)観光局は教育旅行により日台の交流を深め、学生が帰国した後に台湾観光を広める代弁者になることを期待しています。
教育旅行は台湾のインバウンドを復活させる上でとても重要なポジションを占めているのです。
直近では、12月16日から20日の間、株式会社JTBが日本各地の教育旅行担当者による台湾現地視察を実施しました。
他、観光局は2023年の台湾ランタンフェスティバル期間中に日本教育旅行部会(JOTC)のメンバー15名を台湾に招待しました。
こうして安心安全な台湾を修学旅行先として選んでもらうよう働きかけています。