2021年、50年に1度の大干ばつが台湾を襲う。今回の水不足問題を解説します。

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日本ではあまり知られていませんが、2021年の台湾は50年に1度の大干ばつに悩まされています。

今回は台湾の現状を日本の皆様にお伝えできればと思い、現地の様子を詳細に解説させていただきます。

 

2021年、台湾大干ばつの原因は?

2021年の干ばつの原因は主に以下の通りです。

  • 2020年の台湾の雨期が短かった
  • 2020年の台風シーズン(6〜10月)に台風の上陸・接近がなかった
  • ラニーニャ現象により2021年春の降雨量も少なかった

つまり、2020年から現在にかけて多くの要因が積み重なり歴史的な干ばつに至ったというわけです。

 

台湾各地のダムの貯水率

台湾の北半分と東半分は東北モンスーンがもたらした豊富な降雨により水不足を免れました。

しかし、中南部は多くのダムが過去最低の貯水率を記録しており、台湾中部を中心に水道の水量制限が始まっています。

用數據看台灣というサイトで台湾各地のダムの貯水率をリアルタイムで見ることができます。

以下貯水率は2021年4月下旬のものです。

まずは北部から見てみましょう。

一番北の新山ダム(基隆)と翡翠ダム(台北、新北)は貯水率が高いです。これは、台湾北部は冬季によく雨が降るためです。

しかし、そこから少し南下すると、他のダムは全て貯水率が20%をきった状態となってしまいます。

 

次に中南部を見てみましょう。

中南部は蘭潭ダム(嘉義)を除きほとんどが水不足の状態です。

特に、徳基ダム(台中)は台湾中部の主要ダムであり、ここの貯水率が低いため多くの人々の生活に影響が出ています。

 

最後に南部を見てみましょう。

南部も水不足ですが、烏山頭ダム(台南)と牡丹ダム(屏東)でなんとか持ちこたえています。

 

2021年台湾水不足の対応策5つ

台湾政府もただ雨が降ることを待っているわけではありません。

以下では台湾政府が実施するいくつかの対応策を紹介します。

 

①水道の水量制限(断水)を実施

台中市、苗栗県、彰化県北部の一部では4月6日から週2日の断水が行われています。

これにより15%の節水が実現していますが、106万4千世帯の生活に影響が出ています。

週2日の断水日は、トイレの水が流せない、皿が洗えない、お風呂に入れないなどの問題が起きています。

また、台湾は小さな食堂や屋台を営む事業主が多く、こうした事業主は洗う必要のない紙コップや紙皿を使用したり定休日を断水日に変更するなどして対応を進めています。

今のところ断水の終わりは見えておらず、水不足が解消されるまで断水が続く予定です。次回大量に雨が降る可能性があるのは、5月の梅雨シーズン及び6月以降の台風シーズンです。

 

②プール、サウナ、洗車場の営業停止

標題のとおり、プール、サウナ、洗車場が営業停止となっています。

また、学校の水泳の授業も海や川での安全指導の授業に変更となっています。

 

③井戸の掘削

台中では24時間体制で井戸を掘削しており、5月初旬には毎日115,000トンの水が供給できるようになります。これは50万人分の水に相当します。

 

④海水淡水化プラントの増設

経済部は台中に緊急用の海水淡水化プラントを増設し、5月中旬から一日あたり13,000トンの給水を行う予定です。

 

⑤人口雨

水資源部の雨増強チームは2020年9月から2021年4月22日までに台湾北部、中部、南部の貯水池集水域で合計45回の人工的な雨増強作業を実施しています。

 

2021年台湾水不足による影響

今回の水不足は人々の日常生活や飲食業界以外にも様々な影響をもたらしています。

まず、中部の主な農産物である茶、梅、タケノコなどの品質が低下し、売れ行きが悪くなっています。

また、台湾の主要産業である半導体は製造過程において大量の水を使うため、その生産に大きな支障が出ると言われています。

台湾経済部(経産省に相当)は台中市にある2つの主要サイエンスパーク内の企業向けの水供給を15%減らすと説明しました。

サムスンやインテルを抑えて半導体業界首位に立つTSMC(台湾積体電路製造)は大きな危機に陥る状況ではないと述べていますが、万が一TSMCが減産となると、世界中の製造業に影響が及びます。

農産物の不足や品質低下による影響は台湾内に限定されますが、半導体の供給は世界のサプライチェーンと関係しているため、先進各国にとって人ごととは言えない問題なのです。

 

最後に

台湾は5月中旬から梅雨が始まり6月から台風シーズンに入るため、後1ヶ月ほど乗り切ることができれば水不足問題は解決されます。

しかし、これはあくまでも「例年通りであれば」という話であり、2020年や2021年初旬のような異常気象が続けば台湾に大きな危機が訪れてしまうのです。

特に半導体業界への影響は日本も他人事ではないため、台湾の水不足問題は日本人としても注目すべきニュースと言えるでしょう。

 

参考記事:https://zh.wikipedia.org/wiki/2021年臺灣旱災缺水危機

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