2020年、台湾が少子化で初の総人口マイナス成長に。出生率や減少数を公開。

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台湾は2020年に初めて人口がマイナス成長になりました。中華民国(台湾)立法院法制局は少子化問題に関する報告書を発表し、少子化は多くの社会問題に影響を与えうることを指摘しており、行政院(内閣)が中心となって少子化政策に関する省庁間協力をするなどの労働力不足に関する解決策を提案しました。

台湾の少子化問題は非常に深刻。2020年、総人口が初めてマイナス成長に。

行政院主計処の報告によると、2000年から2005年までの世界の出生率は2.69人(15歳から49歳までの出産可能年齢の女性が、一生を終えるまでに産む赤ちゃんの数)でした。

しかし、内政部戸政司の統計によると、台湾の出生率は1998年に1.5人を下回り、2019年には1.05人となっており、台湾の少子化問題は20年前から存在していたことがわかります。 そして、内政部はこのほど台湾の2020年人口統計を発表し、1月から12月までの出生数は16万5,249人と過去最低を記録し、死亡数は17万3,156人であったため出生数を上回り、初めて人口がマイナス成長となったと報告しています。

※台湾の総人口は約2350万人、老年人口指数(15-64歳人口に対する65歳以上人口の比率)は約17.96%(2016年末調べ)
※日本の出生率は約1.42人、韓国は約0.97人、香港は約1.07人、シンガポールは約1.14人、中国は約1.7人(2017年末調べ)

少子化問題が各方面にもたらす影響

法制局は少子化問題は各方面に影響を及ぼすと指摘しています。

1.教育面では、学校のクラスの減少、教師余り、私立学校の閉鎖などが起こります。
2.労務面では、労働人口の減少、労働人口の高齢化、想定される経済規模のマンパワーと需要が満たされないことなどが起こります。
3.財務面では、少子化がもたらす逆ピラミッド型の人口構造により、年金や健康保険がますます赤字となり、国家経済の発展に影響を与え、国家の競争力を低下させるなどの問題が起こります。

少子化は労働力不足をもたらす

労働力については、法制局が少子化と労働力不足に関する別のレポートを発表しており、全国工商連合会が白書を発表した2015年の時点で、台湾には水、電気、労働力、土地、人材の「5つの不足」があり、5年後には少子化により労働力不足と人材不足がより一層緊迫すると指摘していました。

法制局は、台湾の人口問題は国家安全保障上の危機であり、人口構造の高齢化により、出生率が低迷し、若年層への負担がますます重くなり、社会の生産性にも影響を与えると指摘しています。 長い目で見れば、産業界の労働者不足、消費力の低下、政府の税収減、労働保険や健康保険の財政問題なども経済的な悩みになる可能性があります。

法務局は、労働力不足に対処するための5つの提言を行っています

1.若年層の低賃金問題を解決

若年層の労働賃金が低いため、生活が困難であり、結婚願望が低下しています。よって、関係当局は、若者の貧困と高い失業率という二重のジレンマを解決するために、産業の高度化と転換を積極的に加速し、教育と労働市場を結びつけ、働きやすい職場環境を構築し、企業家の賃上げへのインセンティブを高めるべきであるとしています。

2.人手不足の業界にスマートテクノロジーを優先的に導入

現在の台湾の人手不足産業は3K(汚い、危険、きつい)産業に集中しています。具体的には、危険リスクの高い製造業、建設業、医療・ヘルスケアサービス業、農水産業などが挙げられます。 法制局は政府がスマートプロダクションを推進する際には、これらの産業に優先的に自動化やスマートテクノロジーを導入し、労働力不足や安全衛生の問題を解決すべきだと提言しています。

3.デジタル技術市場に対応した専門人材の育成を加速

将来的に発展するテクノロジー分野は、クラウドコンピューティング、人工知能、AI、5G通信技術、ブロックチェーンなどが挙げられます。 主務官庁は産業の発展と将来の労働市場のニーズを満たすため、人材の転換をサポートし、デジタル技術人材を育成するために予算を投入すべきであるとしています。

4.外国人専門人材を誘致するため、移民政策を適切に緩和

主務官庁は外国のハイテク人材を誘致するために、出入国管理政策を適切に緩和しインセンティブや優遇措置を提供することで、わが国の国際競争力を高め、少子化に伴う労働力不足の影響を緩和する必要があります。

5.女性と中高年の労働参加率の向上

台湾の女性や中高年の労働参加率は年々上昇していますが、日本や韓国やアメリカなどと比べるとまだまだ低い状況です。 関係当局は労働力不足を解決するために、既存の企業文化を改善し職場における性別差別や年齢差別をなくすための「中高年就業促進法(中国語:中高齡者及高齡者就業促進法)」および「男女共同参画法(中国語:性別工作平等法)」の推進および実施を強化すべきであると考えています。

少子化問題には様々な事象と関係しており、行政院(内閣)が主導で各省庁をまたぐ解決チームを組織するべき

これまで台湾では少子化問題に対する解決策は様々な機関から提案されてきましたが、統合された計画や監督する仕組みはありませんでした。 例えば、低額の育児手当は労働省が、幼児教育の授業料は教育省が、若者向け住宅ローンは内務省が、税金の優遇措置は財務省がそれぞれ担当してきており、各省庁間で連携はとれていませんでした。そこで法制局は行政院が少子化政策に関する省庁間グループを設置し、台湾の少子化政策を体系的に計画し、その実効性を高めるために様々な機関による実施を監督することを提案しています。

参考記事: BuzzOrange

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