史上最悪の二月?コロナウイルスの影響により、エバー航空とチャイナエアの売上高がともに100億元を下回り、乗客数は37%下落。

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新型コロナウィルスの台湾航空業界への影響

新型コロナウイルスはグローバル経済に悪影響を与えており、なかでも世界の航空会社の業績が特に悪化しています。台湾の航空業界はどの程度ダメージを受けたのでしょうか?

チャイナエア(中華航空)とエバー航空(長栄航空)が2月に発表したレポートによると、2月は過去10年で最悪な月となったようです。

人々が感染を恐れて出国をしなくなったため、これら2社の2月の売上高はともに100億元を下回りました。ただし、2社の航空路線や経営方法は異なり、エアチャイナは多くの貨物専用航空機を有しているため、貨物運送による売上高が2割ほど成長しています。

チャイナエアの7割の便が影響を受け、乗客数が37%下落。

月初の内部レポートでは、チャイナエアは「雪崩」という言葉を用いて今回の状況を説明しました。

チャイナエアは2月の財務レポートにて、2月の売上高は93.42億元であると発表しました。100億を下回り、昨年同期と比較して24.8%も減少しました。2009年7月以来最悪の数字となります。

下落の主な原因は、航空便と関係があります。チャイナエアの便は中国・台湾・香港・マカオで全体の22%を占めています。そして、2月は全体の23%にあたる約1400便がキャンセルとなりました。内訳は、中国路線は610便、香港路線は520便、東北アジア路線は160便、残りは東南アジア路線と欧米路線です。新型コロナウイルスの影響が出始めてから、2月から4月の合計で約6500便がキャンセルとなっており、7割の路線が影響を受けています。

チャイナエアの売上高の割合


東北アジア 29%
香港・マカオ・中国 22%
東南アジア 18%
アメリカ大陸 15%
欧州 10%
オセアニア 6%

タイガーエアの単月の売り上げは史上最悪に。

他、チャイナエア100%子会社の「タイガーエア」は、独占航路戦略により2017年から収益力を増強しており、今年末に上場する予定でした。

今回の新型コロナウイルスの影響で、タイガーエアは2月から4月にかけて合計で500便をキャンセルしました。3月末までの韓国路線はなくなり、約72便がキャンセルとなりました。また、日本への便も複数キャンセルとなっています。2月の売上高は5.85億元であり、昨年同期と比べて37.2%も減少しています。これは史上最悪の単月売上となりました。

過去8年で最悪。エバー航空の月間売上が100億元を下回る。

2014年4月以降、エバー航空の月間売上は常に100億元以上をキープしていました。特に、昨年8月は168.3億元にのぼり、過去最高の売上を記録しました。

しかし、今回の新型コロナウイルスの影響により、エバー航空の2月の売上は88.53億元となり、100億元を下回りました。これは昨年同期と比較して34.6%の下落であり、2012年3月以降最も低い数字となります。

チャイナエアとは違い、エバー航空の主要な便はアメリカ大陸と東北アジアに集中しており、中国・香港・マカオへの便は全体の16%に過ぎません。しかし、今回新型コロナウイルスの影響を受け、2月にキャンセルとなった中国・香港・マカオへのフライトは532便にのぼり、乗客数は昨年同期と比較して37%減少しました。


アメリカ大陸 39%
東北アジア 19%
香港・マカオ・中国 16%
東南アジア 13%
欧州 12%

統計によると、エバー航空は半分の便が影響を受けましたが、今のところ給料減額や無給などの情報は入っていません。もともと2月から就航開始が予定されていたミラノ便と4月から就航開始が予定されていたプーケット便が延期となりました。

チャイナエアは貨物便が2割成長となる。

乗客数は減ってしまいましたが、貨物便は逆に増えています。
新型コロナウイルスは全世界のサプライチェーンに混乱をもたらしました。企業が業務再開を進めるにあたり、電子部品や医療関連材料を運送する必要があるため、2月の貨物運送の需要が大幅に増えています。台湾から北京・上海・広州・深センへの運送費を例に挙げると、価格は6倍に跳ね上がっており、少ない機体を奪い合うかたちになっています。

中国へのフライトは減っており、機体は足りておらず、「乗客はいないが、貨物は多い」というギャップが生まれています。
公式資料によると、チャイナエアは合計で18の貨物専用機を有しています。貨物による売上高は全体の29%であり、28.9億元にのぼります。これは、昨年同期と比較して20.9%の成長となります。

チャイナエアの売上内訳


乗客 64%
貨物 29%
その他 7%

しかし、エバー航空の貨物専用機は5機のみです。貨物による売上高は全体の15%であり、17.65億元となります。これは昨年同期とほぼ同じ水準であり、わずかに0.2%成長したのみです。

エバー航空の売上内訳


乗客 55%
貨物 15%
その他 30%

チャイナエアの貨物専用機の数は多く、新型コロナウイルスの影響下では、売上に貢献するかたちとなりました。

最悪の状況にはまだ達していない?航空業界に大きな変化が訪れる?

航空業界の先行きははっきりしておらず、チャイナエアとエバー航空の株価は下がり続けています。それぞれの株価は、昨年末に9.06元と13.75元をつけましたが、2月10日の終値は8.10元と11.70元となりました。計算すると、1000億元以上も時価総額が減ったことになります。

年初にはスターラックス航空のフライト開始が各界から期待されていました。参考にできる財務レポートは公開されていませんが、当社の運営は大きな影響を受けました。当初は3フライトを予定していましたが、現在は1日1フライトのベトナムダナン便が残っているのみです。しかし、スターラックス航空は中国、日本、韓国へのフライトがなく、機体も大きくないため、チャイナエアやエバー航空とくらべると、損失はそこまで大きくないはずです。

全世界の航空業界は引き続き不況が続きます。大韓航空の乗客は8割となりました。大韓航空の代表理事・禹基洪(Woo Kee-hong)は「大韓航空は存亡の危機と言える」と述べています。また、Air France KLMは「これからの数ヶ月で受けるダメージはおそらく更に大きいだろう」と述べています。

今回の不況により、全世界の航空会社に大きな変化がもたらされることでしょう。

参考記事:史上最慘二月?受疫情衝擊,長榮、華航營收雙雙跌破百億、客運量狂掉37%

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