新型コロナウイルスのパンデミック宣言から一年が経ちました。
コロナの影響が少なかった台湾でも、飲食・観光・航空などの業界は大きなダメージを受けました。
今回は台湾のホテル業にフォーカスし、この一年の状況をまとめました。
【目次】
台湾ホテル業界の現状。2020年は事業規模が32.4%減少。
直近10年間、台湾のホテル業界は安定した成長を遂げてきました。業界規模は2010年の430億元から2019年の600億元まで成長し、ホテル利用者数も年間971万人から1300万人に増加しました。
しかし、2020年にはコロナの影響で国内外の訪問者数が激減し、業界全体の規模が10年前の水準まで縮小しました。2020年、台湾のホテル業界全体の規模は2019年と比較して32.4%減の405億台湾元となり、2010年の業界規模を下回りました。また、全体の稼働率は2019年の66.9%から38.8%に低下し、サービスを受けた観光客数は1300万人から882万人に減少し、平均宿泊料金は3763台湾元から3608台湾元に低下しています。
国民旅行補助金(7月)やコロナ沈静化ムードにより2020年後半に台湾人による旅行需要が復活したため、2020年の台湾人の宿泊客数は年間26.5%増の749万人となっています(過去最高)。 とはいえ海外からの訪問者数は134万人にまで減少しており(年81.1%の減少)、台湾人旅行客と海外からの旅行客をあわせると大幅減少しているので、業界への影響はやはり深刻と言えます。
2020年の台湾ホテル業界の地域別データ
ここでは台湾ホテル業界の地域別の数字を見ていきます。2020年の台北市内のホテルは、2019年と比べて、稼働率・平均宿泊料金ともに大幅に減少しました。 これは、台北のホテルはコロナの影響を大きく受け、海外旅行客の減少分を補うことができなかったからです。一方、2020年後半は台湾人による台湾内旅行の需要が増加したため、花蓮や墾丁のような地方観光地の需要が大きく回復しました。
以下、2019年と比較した2020年の地域別データをまとめました。
台北
2020年の観光ホテル業の規模は175億1,000万台湾元(前年同期比45.6%減)となり、稼働率は28.1%、平均宿泊料金は3,480台湾元(前年同期比20.6%減)となりました。 具体的な例でいうと、「晶華酒店」の売上は33.9%減の21億9,000万元、「シェラトン台北」の売上は43.7%減の14億4,000万元となりました。
台北近郊(桃園・新竹・苗栗)
2020年の観光ホテル業の規模は39億2,000万台湾元(前年同期比27.5%減)、稼働率は32.7%、平均宿泊料金は2,868台湾元(同6.1%増)となりました。具体的な例でいうと、「シェラトン新竹」は売上高6億1,000万元で、年率42.7%の減少となりました。
高雄(南部)
2020年の観光ホテル業の規模は36億5,000万元(前年比31.3%減)、年間稼働率は41.4%、平均宿泊料金は2,550元(同6.9%増)となりました。 代表的なところでは、「漢来ホテル」が売上高12億1,000万元で年率20.6%減、「高雄国賓ホテル」が売上高5億8,000万元で年率26.2%減となっています。
台中(中部)
2020年の観光ホテル業の規模は18億9,000万元(前年同期比25.3%減)、稼働率48.4%、平均宿泊料金2,496元(前年同期比2.0%減)となりました。代表的なところでは、「台中長榮桂冠酒店」が4.5億台湾元(26.9%減)、「裕元花園酒店」が4.1億台湾元(23.0%減)となりました。
花蓮(東部)
2020年の観光ホテル業の規模は2019年から5.5%増の16.7億台湾元に達し、稼働率は57.5%、平均宿泊料金は3,518元(前年同期比3.9%減)となりました。代表的なところでは、「瑞穂天合国際観光ホテル」が売上高6.4億元、前年比47.3%増となり、「遠雄悅來酒店」は売上高5.7億元、前年比4.0%増でした。
その他の地域
2020年の観光ホテル業の規模は65億8,000万台湾元(前年同期比14.7%減)、稼働率は48.6%、平均宿泊料金は3,683台湾元(前年同期比2.9%増)となりました。 具体例でいうと、「蘭城晶英酒店(宜蘭地区)」は、売上高が7.3%増の10億台湾元、「香格里拉台南遠東國際大飯店(台南地区)」は、売上高20.8%減の5億7千万台湾元となりました。
地方の景勝地
観光ホテル業は、2019年比1.5%増の52億8,000万台湾元に達し、年間稼働率は56.5%、平均宿泊料金は9.5%増の5,707台湾元となりました。具体的には「日月潭雲品温泉ホテル」が、売上高8.3億台湾元、年率4.5%の成長、「墾丁凱撒大飯店」が、売上高60億台湾元で、2019年とほぼ同じとなっています。
台湾のホテルの個別事例
2020年のコロナ禍においても、優れたビジネス戦略により業績を安定化させた観光ホテルは数多く存在します。 例えば、晶華、寒舍、六福、圓山、誠品行旅、美福、君悅などの観光ホテルは、パッケージングやケータリングの経験を応用し、フードギフト市場に参入し、収益源を拡大しました。また、晶華酒店は国際観光ホテルから「シティリゾートホテル」へと変貌を遂げ、数々のプロモーションを打ち出し、7-11とコラボした商品を開発するなどしています。礁溪老爺大酒店は防疫を意識しキャンピングカーへの宿泊サービスを打ち出し、人気を博しました。
一方、コロナ後の旅行需要を見込み、新規ホテルを開業する動きも見られます。特に分野横断的なホテル事業参入や外資(主に日本企業)によるホテル事業参入が2021年のトレンドとして注目されています。台北地下鉄は20億元を投じて「スマート・テクノロジー・ホテル」に参入する予定であり、中華郵政(郵便局)は6億台湾元近くを投じて台中に大型ホテルを建設する予定です。外資では、2020年に日本の三井物産が運営する三井ガーデンホテルが開業しており、2021年には台北にJR東日本ホテル、高雄には日航ホテル(60億台湾元の投資)が開業する予定です。