訪日台湾人旅行客といえば、かつては家族や友人と一緒に賑やかに観光地を巡り、ドラッグストアでカゴいっぱいに爆買いをする姿が印象的でした。もちろん現在もこのような台湾人観光客はたくさんいます。しかし、一人当たりGDPが日本を上回り、日本に旅行に来た回数は5回にも10回にも達し、消費の質もデジタル環境も成熟しきった2026年現在、彼らの日本旅行のスタイルや関心は変化し続けています。
よって今回は台湾のSNSや掲示板で話題に挙がりやすいキーワードを切り口に、訪日台湾人旅行客の興味を探っていきます。
【目次】
1.「独旅(ドゥーリュ)」:自分を癒やす、究極の一人旅

1.「独旅(ドゥーリュ)」:自分を癒やす、究極の一人旅
1.「独旅(ドゥーリュ)」:自分を癒やす、究極の一人旅[/caption]
これまで台湾人にとって旅行はみんなで楽しむものでした。しかし今、Z世代を中心に爆発的なブームとなっているのが「独旅(ドゥーリュ)」、つまり一人旅です。 これは単身世帯の増加や個人の時間を尊重する価値観が定着したことが背景にあります。そしてなによりも、これまで団体旅行で何度も日本を訪れることで「日本は治安が良く、一人での食事や宿泊のインフラが整っている国」としての認知が高まったことも大きく関係しています。台湾の最大手掲示板「Dcard」では「一人でどこまで自由に、贅沢に楽しめるか」というテーマの旅行攻略スレッドが連日人気を集めています。
今後は日本で台湾人向けに「お一人様限定」の宿泊プランや周囲を気にせず撮影できる「一人席」を充実させるようなお店が増えていくかもしれません。
2.「二季(アールジー)」:春と秋が短くなり、気候や天候に左右されない体験が人気に

2.「二季(アールジー)」:春と秋が短くなり、気候や天候に左右されない体験が人気に
日本の四季も台湾では少し違った捉え方をされ始めています。気候変動の影響で春と秋が短くなり、「日本には夏と冬の『二季(アールジー)』しかない」という言葉がバズっているのです。 PTTなどの掲示板では、「桜や紅葉の時期が読みづらすぎて、旅行の計画が立てられない」という切実な声が上がっています。そのため消費者の関心は「季節限定の風景」から、時期を問わず楽しめる「屋内の没入型体験」や「全天候型のデジタルアート」へとシフトしています。
今後は従来のシーズンものだけに頼らず、「雨の日でも、真夏でも、変わらず特別な体験ができる」という提案が、年間を通じた集客の鍵となるかもしれません。
3.「特殊体験 / 手作」:モノの消費から「参加」への移行

3.「特殊体験 / 手作」:モノの消費から「参加」への移行
もちろん今でも日本で爆買いをする台湾人は多いです。質の高い日本製品をより安く手に入れようとする心理は今も健在です。そんな中、今の台湾人がステータスに感じているのが「手作(ショウズオ)」、つまり現地での手作り体験や特殊な参加型アクティビティです。台湾の大型掲示板「Dcard」では、伝統文化体験や伝統菓子作り、伝統工芸品のワークショップなどに没頭する様子を動画でシェアするのがトレンドです。安くていいものを求めるフェーズから、現地での特別な体験を求めるフェーズに移行しています。
台湾でも旅行系Vlogは大人気で、中でも日本旅行は王道のコンテンツです。観光客に動画撮影をしてもらいやすい環境づくりや映える内装や映える商品を用意することが重要になってくるでしょう。
4.「JESTA(ジェスタ)」:新しい入国ルールへの期待と不安

4.「JESTA(ジェスタ)」:新しい入国ルールへの期待と不安
2026年、実務的な面で最も注目されているワードの一つが日本版ETAである「JESTA(ジェスタ)」です。これまで台湾人にとって日本は「ビザなしでいつでも気軽に行ける国」でありそれが大きな魅力の一つでした。それだけに事前入国審査という新しいルールの導入には「手続きは難しいのか?」「有料なのか?」といった不安の声が掲示板などで渦巻いています。
旅行会社や宿泊施設などは自社サイトやSNSで正確で分かりやすい「入国手続きガイド」をいち早く発信することで不安を抱える旅行客からの「信頼」を勝ち取ることができるかもしれません。
5.「二重価格」:台湾人の厳格なコスパ意識&公平意識

5.「二重価格」:台湾人の厳格なコスパ意識&公平意識
いま最も慎重に扱うべきテーマが外国人向けの「二重価格」の問題です。 台湾人はコストパフォーマンスに極めて厳格な国民性を持っています。一人当たりGDPで日本を抜いたとはいえ、「外国人だから高くお金を取られる」という不透明な格差には強い抵抗感と不快感を示します。
もし価格を分けるのであれば、単なる「外国人料金」ではなく、多言語対応や特別な付加価値が含まれていることを丁寧に説明する「透明性」が不可欠です。納得感のない価格設定は一瞬で炎上のリスクを招きかねません。
6.「都市から地方へ」:オーバーツーリズムを避けた「静かな日本」

6.「都市から地方へ」:オーバーツーリズムを避けた「静かな日本」
東京・大阪・京都などの人気観光地に行ったことがある台湾のリピーター客は「台湾人が知らない日本の地方」を探し始めています。例えば、京都ではなく金沢や富山、仙台ではなく福島や秋田や青森、広島ではなく岡山、といった観光客が少ないエリアにも注目が集まり始めています。
台湾人はSNSで「自分だけが知っている特別な場所」をシェアしたり日本の原風景や自然が残っている郊外を見つけることに喜びを感じます。また、台湾も仕事のストレスが深刻化しており、旅行に癒しを求める人が少なくないです。これら理由から地方旅行を選ぶ人が増えているのです。
「有名観光地から車で〇分、まだ誰も知らない絶景」といったニッチで希少性の高いポジショニングが、日本旅行中級以上の情報感度が高い層を動かします。
7.「外食から自炊へ」:暮らすように旅をしたい層が増加

7.「外食から自炊へ」:暮らすように旅をしたい層が増加
これまでの台湾人はSNSでグルメ情報を集め、美味しい店を探し求める旅行が人気でした。しかしここ数年で変化が起き始めています。キッチンと食器付きのホテルや民宿を予約し、スーパーに行き食材を買って自分で調理する人が増えているのです。これは人によって理由は様々です。一部の人は節約のためであり、一部の人は日本で生活しているような体験を求めており、一部の人は日本食を愛し本場の食材で料理を作ってみたいという人もいます。また、外食よりもホテルで食べる方が気軽だと考えている子供連れや老人連れの旅行者もいます。
まとめ
台湾人の中にはもうすでに日本に10回以上も来ている人や、一年に3回も4回も訪日するヘビーユーザーがいます。こういった台湾人は東京や京都や北海道の有名観光地は一通り行っています。また、近年は1人あたりGDPも日本を超え裕福な人が増えてきています。これら要因により、自分だけの特別な体験、癒しの旅、現地で暮らすような体験を求める人が増えてきています。インバウンド業界の変化は目まぐるしく、今後も変化に注意していくべきです。
引用・参考資料
DataReportal: Digital 2026 Taiwan