台湾の医学や健康保険リソースは世界をリードしています。診察価格が安いだけでなく診察時間も短いため、台湾人は安心して医療を受けることができます。しかし、台湾の医療リソースは十分に豊富であり、多くの人が医療機関を簡単に利用することができるため、リモート医療(Telemedicine)はかえって遅れをとっていました。
多くの先進国家では可住地域が増大し医療コストが上昇しているため、インターネットの普及とともにデジタル化された遠隔医療が発達してきました。例えば、アメリカでは親がかかりつけの医師に電話をして子どもの症状を伝えると、FAXで処方箋が送られてくるようになっています。あとはその処方箋を持って近場の薬局に行けば、簡単に薬を買うことができるのです。また、オーストラリアでは患者はテレビ電話を通して医師に診察してもらうことができ、薬局にて薬を買うことができるようになっています。他、日本では1997年から遠隔医療を取り入れており、高齢化社会の到来に合わせて遠隔医療にて老人やコミュニティの面倒を見る仕組みが出来上がっています。
しかし、台湾は2018年になってやっと高齢化社会に対応する必要に迫られ、遠隔医療分野を緩和することにしました。まずは「山地や離島などの辺鄙なエリア」の患者、それから「特殊な状況」及び「緊急事態」に陥っている病人の順で遠隔医療を適用し、診察が受けられるようにしています。
これにより、過去に長年アメリカで暮らした経験のある徐克宇(健康聯網資訊服務の創業者)は、台湾の遠隔医療分野が遅れをとっていることに気づき、また、商機があると考えて、台湾の最初の遠隔医療プラットフォーム「醫生馬上看」を開発しました。2019年4月からは辺鄙なエリアの居住者・台湾に住んでいる外国人・海外にいる会員などに向けて遠隔医療サービスを提供しています。現在、患者は辺鄙な場所にいようが海外にいようが、日中であろうが朝方だろうが、いつでもスマホのテレビ電話機能を通して専門医に診てもらうことができます。
【目次】
かつてアメリカのベンチャーキャピタルで育んだ【公益性の高いビジネスに従事する】という初心を忘れず、台湾で最初の遠隔医療プラットフォームを作った。
徐克宇はアメリカにいた時間のほとんどをベンチャーキャピタルで過ごしました。グレーターチャイナ地区及びアメリカ・シリコンバレーにおける30年以上にわたるハイテク分野投資とマネジメントの経験があり、アメリカで自身のベンチャーキャピタル企業Sky Capitalを設立した経験もあります。彼のファンドは1億米ドル以上を運営していました。
「私は交通大学の理科学研究所を卒業したあとすぐ米国に移り、ベンチャーキャピタルの仕事を始めました。90年代は主に半導体への投資を行い、2000年に入るとソフトウェアやインターネット関連に投資するようになりました。」
長年にわたるアメリカのベンチャーキャピタルでの経験により、企業戦略やM&Aについて詳しく知ることができ、同時にスタートアップについても敏感になりました。これらの経験は自身の創業の過程に大きな影響をもたらしています。
アメリカの遠隔医療分野はすでに十分発達しています。体に問題があれば、かかりつけの医者に電話をして身体の状況を伝え、薬を処方してもらうことができます。一方、台湾にはずっと遠隔医療に関する法的な許可がありませんでした。しかし、台湾の辺鄙なエリアで遠隔医療が使えるようになったことを知り、意を決して、かつて投資したことのある会社と協力し、テレビ電話にて診察ができるシステムを構築しました。
現在、台湾には平均で1000名ほどの義務診療を行う医師がいます。しかし、効率的に診察できるツールはありません。桃園の拉拉山部落を例にとると、毎月この部落に診察に行く医師はいますが、医師の間で連携をとることができるツールはなく、異なる科の医師が協力して診察をすることができない状態にあります。徐克宇はこうした辺鄙なエリアにおける医療問題を目の当たりにし、公益性のあるビジネスに従事するという初心のもと、モバイルアプリケーション・通信・情報技術・医療の4分野の専門家をチームに招き入れ、台湾で最初の遠隔医療プラットフォームを作りました。
政府が進める遠隔医療の流れに追いつき、ハッカソン大賞を受賞!
徐克宇は一年間の計画及び準備を経て、協力医師を集め、プラットフォームの原型を作り出しました。しかし、システムには薬の供給という医療診断に重要な項目が欠けていました。
より完全なサービスを提供するため、徐克宇は健保署長を訪問し、遠隔医療における健保給付薬品の可能性を探りました。すると思いがけず、健保署長から法令を遠隔医療に合わせた内容に修正するという回答を得た上に、このプラットフォームを企業サービスプランにしてはどうかというアドバイスまでもらいました。これにより徐克宇は自身のサービスに対する自信を深め、2017年に正式に会社を設立しました。
2年後、徐克宇の健康聯網資訊服務会社は2018年の総統杯ハッカソン(ソフトウェア関連プロジェクトのイベント)に参加します。
徐克宇は当時を振り返り「あの時のことをはっきりと覚えています。5月19日に行政院政務委員のオードリータン氏(唐鳳)が私のサービスを審査した時、5月11日に遠隔医療法が通過したあと5月19日にすぐこのようなシステムが出現したのは本当にすごいことだ、とお褒めいただきました。」と述べました。そして、徐克宇はその年のハッカソンの最優秀賞に入選しました。
硬直的需要を解決:海外にいてもタイムリーに台湾のプロの医療を受けられる。
「醫生馬上看」のアプリのビジネスモデルはB2Bをメインとしています。主に「企業サービス」「保険会社サービス」「クレジットカードサービス」の3種の客層をターゲットとしています。
例えば、企業が「醫生馬上看」を導入することで、社員が出張時に体調を崩しても、外地で適切な医療を受けられるようになります。海外出張が多い社員にとっては大きな保障となることでしょう。また、保険会社はこのサービスを顧客の旅行安全保険に加えることで、現地の医療システムや外国語に詳しくない顧客も安心して旅行を楽しむことができるようになります。
この他、「醫生馬上看」のアプリにはユーザー病歴システムが内臓されています。ユーザーは権限を得ることにより、患者の基本データ・個人病歴・診療記録などを閲覧することができ、緊急で遠隔医療が必要となった際には、医者による個人データや病歴などの確認を省き、また、言語の壁も問題もなく、すぐに適切な診断をすることができるようになっています。もちろん、このシステムは高度なパスワード技術を採用しているため、患者のデータはしっかりと管理されています。これにより、患者は自分のデータを安心して特定の対象に開示することができるようになっています(権限の削除もできます)。個人情報保護法のもと、今後は更に徹底して健康データベースを人々にフィードバックしていきます。
台湾の医学分野及び医療リソースは世界をリードしています。健康聯網資訊は台湾医療の門戸となり、台湾の医療リソース及び緊急医療サービスを世界と結びつけることを望んでいます。現在はシステムと機能の向上の段階にあります。最善のビジネスモデルで、中国や東南アジアなどの地域にもサービスを広めていく予定です。