中国外食大手「西貝(XIBEI)」を巡る一連のネット世論騒動が、企業経営とSNSの関係性について改めて注目を集めている。
本件は、影響力の大きいネットインフルエンサー(いわゆる“大V”)と、西貝創業者である賈国龍氏との間で起きた公開的なSNS上の応酬を発端とする。強い言葉を伴う投稿が拡散され、世論が急速に過熱。その過程で、西貝側は「全国102店舗の閉鎖を予定している」と発表し、約4,000人の従業員が配置転換または失職の可能性に直面、損失額は5億元超とも報じられた。
【目次】
なぜ一企業がSNS投稿一つで危機に陥ったのか
中国のネット空間では、
• 強い言葉で注目を集めるインフルエンサー
• 議論を可視化・増幅させるプラットフォーム
• 感情的に反応しやすい世論構造
が相互に作用し、短時間で企業イメージや経営判断に影響を及ぼすケースが増えている。
一方で、企業側が従来型の「強硬な否定」「トップによる直接反論」といった、いわば“前インターネット時代”的対応を取った場合、かえって炎上を拡大させるリスクも顕在化している。
日本ブランドにとっての重要な示唆
本件は、日本企業が中国市場へ進出する際に、以下の点を軽視できないことを示している。
• 中国ではSNS世論が「マーケティング」ではなく「経営環境」の一部である
• 消費者の声、インフルエンサーの発言は即座に企業評価へ直結する
• ネット世論対応を誤ると、実店舗・雇用・投資判断にまで波及する
特に、日本市場とは異なり、中国では「沈黙」や「硬直した対応」もリスクになり得る。
中国市場でネットメディアをどう活用すべきか
中国で事業展開を行う企業にとって、SNSやネットメディアは単なる宣伝手段ではなく、公共性を持つ「議論の場」である。
• 主流メディア、KOL、自媒体(個人発信)を明確に区分し、対応方針を設計する
• 危機発生時は感情的反論ではなく、事実整理と第三者視点を重視する
• 経営層自身が中国の世論形成メカニズムを理解する
ことが不可欠となっている。
中国政府も「健全な世論環境の整備」を経済環境の重要要素として掲げており、今後はプラットフォーム、発信者、企業それぞれの責任がより厳しく問われていくと見られる。
終わりに
西貝の事例は、中国経済の不安定さを示すものではなく、むしろ中国市場が持つ“ダイナミズムと影響力の大きさ”を象徴する出来事である。
日本企業にとって重要なのは、恐れることではなく、
中国特有のネット世論環境を理解し、戦略的に向き合うことだと言えるだろう。