Z世代とは1996年~2010年に生まれた人々を指し、現在12~26歳にあたります。
中華民国(台湾)行政院の「重要性別統計データベース」によると、台湾の総人口は2,342万人、Z世代の人口は約375万人で、そのうち18~26歳の253万人が経済的な意思決定能力を持つとされています。
これまでX世代・Y世代(27~57歳)がB2C企業やマーケティングメディアにとって主要なターゲット層とされてきました。しかし、Z世代(12~26歳)が徐々に社会に出て消費力を持ち始めたことで、この世代も新たな消費の中心として注目を集めています。
そこで今回は台湾のZ世代の特徴、消費行動、何を考えているかについて情報をまとめてみました。
温度計Surveyの調査結果
《温度計Survey》は、2024年5月22日から5月28日まで「Z世代の消費トレンドと行動調査」を実施し、台湾のZ世代を対象にオンラインショッピングの行動と嗜好について調査しました。合計1,085件の有効回答が得られました。
参考資料:https://dailyview.tw/insight/detail/26
台湾のZ世代の消費トレンド
調査結果によると、9割以上の消費者がオンラインショッピングで「価格が高い場合は別のプラットフォームで購入する」傾向があることがわかりました。さらに、7割以上が年間のECサイトでの支出額が「3万元(約15万円)以下」と回答し、8割以上が「コンビニ受取」サービスを好むことが判明しました。
全体的にZ世代の購買行動は価格志向でありながらも品質を重視し、コストパフォーマンス(CP値)の高さを求める傾向が強いことが特徴です。
台湾のZ世代は「生活」を最優先。健康・幸福・自由を重視
ネット調査によると、Z世代は生活を重視し、ワークライフバランスを求めています。時間を柔軟に活用し、より自由なライフスタイルを送りたいと考えています。
デジタルネイティブであるZ世代はインターネットやテクノロジーに非常に精通しており、さまざまな電子機器やSNSプラットフォームを活用しています。また、情報収集や交流、エンタメにおいてもオンラインを積極的に利用する傾向があります。
Z世代にとって「仕事以外の時間(生活)」は最優先事項であり、健康・幸福・自由を大切にしています。また、家庭環境も重視し、オープンな家庭の雰囲気を好み、家族同士の尊重や理解を求める傾向があります。個人の空間や自主性も重要視されていることが分かりました。
財団法人資策會產業情報研究所(MIC)の調査結果
財団法人資策會產業情報研究所(MIC)が2025年に台湾のZ世代を対象にオンラインにてサンプル調査(有効回答数1,068件)を行いました。
参考資料:https://w3.sipa.gov.tw/SPANEWS/newsletter/download.jsp?FileName=1669880366721.pdf
台湾のZ世代は恋愛・人間関係・マイホーム・車に関心あり。結婚や出産には消極的
近年、韓国の若者の間では「五つの諦め(恋愛・結婚・出産・住宅・人間関係を諦める)」や「七つの諦め(キャリアや夢も含めて諦める)」といった価値観が話題になっており、中国の若者の間では「寝そべり族」という競争社会を忌避し住宅購入などの高額消費・結婚・出産を諦めるライフスタイルが話題になっていますが、台湾のZ世代はこれらとは異なります。
• 台湾のZ世代の67.3%が恋愛や友人関係に興味を持っており、恋愛を諦めた人はわずか2.8%
• 台湾のZ世代の44.9%が「家と車の両方を持つことが人生の目標」と回答
• 台湾のZ世代の32.3%は「車よりも家を購入したい」と考えている
台湾のZ世代は恋愛、人間関係、マイホーム、車への関心が決して低くないことが分かります。一方で、結婚や出産に対してはやや消極的であり、42.7%が「成り行きに任せる」と回答しています。特に女性は結婚・出産に対してより消極的で、11.8%の女性が「結婚も出産もしない」と回答しており、男性よりも6.7ポイント高いです。この一方で、男性は女性よりも結婚に対する期待が高く、伝統的な価値観からの変化が見られます。
台湾のZ世代の金融リテラシーと投資
台湾のZ世代の大半は資産運用に興味はあるものの、投資方法は保守的なものが中心であることが分かりました。
• 台湾のZ世代の93%が何らかの資産運用を行っており、残り7%は投資に無関心
• 最も多いのは台湾ドルでの貯金(48.4%)(特に女性は貯金比率が高い)
• 次に多いのが金融機関を通して購入できる金融商品への投資(外貨預金・株・先物・投資信託など)(24.7%)
• 仮想通貨やNFTなどの新興投資への関心はわずか1.5%
Z世代の投資傾向は全体的に保守的であり、多くの人が貯金を基本としながら、少しずつ金融商品への投資を始めていると言えます。特に23~26歳の社会人層では、銀行の金融商品を主要な投資手段とする割合が3割に達しています。大きなリスクはとらず、信用できる金融機関を通して堅実に資産を増やしていることが分かります。
<参考データ>
台湾の銀行の定期預金の年利は約1.725%。
台湾のZ世代の電子機器利用およびネット消費
スマートフォン以外で現在18〜26歳のZ世代が所有している代表的な5つの電子製品は以下の通りです。
1.ノートPC(82.2%)
2.イヤホン(72.4%)
3.キーボード・マウス(65.8%)
4.デスクトップPC(42.1%)
5.タブレット(39.1%)
上記の通り、ノートPCとイヤホンの所有率は7割を超えており、この二つはZ世代の標準的なテクノロジーデバイスと言えます。
<参考データ>
台湾で人気のノートパソコンメーカーは、国産のASUS、ACER、MSIや、米国Apple。
タブレットやイヤホンやマウスに関しては近年中国の小米(Xiaomi)も人気になってきているが、中国産であることを理由に避ける人も依然多い。
また、Z世代が最も多く利用するネット消費サービストップ5は以下の通りです。
1.ネットショッピング(63.0%)
2.ネット注文(フードデリバリー)(42.4%)
3.交通チケット予約(25.3%)
4.映画・ドラマのサブスク(20.0%)
5.電子書籍・漫画・雑誌の購入・レンタル・サブスク(17.5%)
特筆すべきは、12.4%のZ世代がネットを通じてギフトを贈っているという点で、これはオンラインゲームの課金やライブ配信の投げ銭、ゲームのサブスクリプションよりも高い割合を示しています。これにより、デジタルギフトがZ世代の新たなソーシャル行動の一環となっていることが明らかになっています。
<参考データ>
ネットショッピングで人気のプラットフォームは、momo、蝦皮、PChomeなど。近年では日本の楽天も存在感を高めている。
フードデリバリーで人気のプラットフォームは、Uber Eats、Food Pandaなど。
台湾のZ世代のコンテンツ消費
台湾のZ世代の読書傾向をみると、70.7%が「紙の本をほとんど読まない、または時々しか読まない」と答えており、「頻繁に読む」としたのはわずか24.1%でした。注目すべきは、21.4%がPodcastで頻繁に本を聴いており、これは紙の本を頻繁に読む層(24.1%)とほぼ同じ割合であることです。
動画視聴に関しては、68.9%がテレビをほとんど見ないか、たまにしか見ない一方、81.5%が無料のネット映像コンテンツを頻繁に視聴していることが分かりました。これにより、Z世代にとってネットプラットフォームが動画視聴の主流となっていることが明確になりました。
音楽に関しても、69.1%が無料のネット音楽サービスを頻繁に利用しており、音楽消費においてもネットの無料コンテンツが主流であることがわかりました。
<参考データ>
台湾で人気のSNSプラットフォームは、LINE、Facebook、Youtube、Instagramなど。X(Twitter)のユーザーは少なく、代わりにThreadsが人気。
これらプラットホームを通して無料コンテンツを楽しみ、広告に出てきた商品を購入することも多い。
台湾のZ世代へのマーケティング
台湾では18歳以上が法的に成人とされ経済的な意思決定が可能となりますが、18〜22歳は主に大学生であり、この層は80.3%が学生、10.5%が社会人となっています。一方、23〜26歳は大学院生である、またはすでに学校を卒業している割合が高く、就業率が54.5%です。
つまり、同じZ世代でも23〜26歳は経済的な余裕があり、より消費ニーズがあります。例えば、金融リテラシーの面では貯蓄に加えて銀行の金融商品を購入する割合が18〜22歳より13.5%高くなっています。そのため、金融サービス業者は消費者向け金融商品やサービスのプロモーションを行う際に23〜26歳層をターゲットとするのが有効です。
また、台湾のZ世代は女性の方が男性よりも就業率が高く、男性は学生の割合が多いです。そのため、女性の方が経済的に安定している傾向があります。これを踏まえると、Z世代向けのマーケティングはまず女性層の開拓を優先するのが効果的と考えられます。