2020年台湾総統選挙の結果と、今後4年間の台湾の方向について

コラム ニュース 台湾

2020年1月11日、第15回目の台湾総統選挙が行われました。
よって今回は、今回の選挙の結果と今後4年間の台湾の方向についてまとめます。

■第15回台湾総統選挙の結果

総統立候補者3名の得票率は以下の通りです。

  • 蔡英文(民進党):57.13%
  • 韓国瑜(国民党):38.61%
  • 宋楚瑜(親民党):4.26%

立法委員の議席数は以下の通りです。

  • 民進党:61議席
  • 国民党:38議席
  • その他:11議席
  • 時代力量:3議席

※全113議席
※台湾総統選挙では、同時に立法委員も選出します。

今回の選挙の投票数と投票率は以下の通りです。

  • 有権者数:1931万1105人
  • 投票数:1430万940人
  • 投票率:74.06%

■今後4年間の台湾の方向について

台湾総統の任期は4年間です。

直接選挙で選ばれた総統は、アメリカ大統領のように強い権限を持ちます。
よって、総統の政策は今後4年間の方向性とほぼ一致すると言えます。
以下に、今回当選した蔡英文氏の政策をまとめました。

今後4年間で台湾がどうなっていくのか?
それにより日本、アメリカ、中国との関係はどうなっていくのか?
そのあたりのことが分かるようにまとめました。

蔡英文氏の政策①:一国二制度の拒否

一国二制度というのは、現在の中国と香港のように、同じ国の中に共産主義と資本主義の2システムが共存する統治方法をいいます。
蔡英文氏は一国二制度に明確に反対しているため、今後4年の中台関係は冷え込み、政治的にも経済的にも交流が減ることが予想されます。
具体的には、中国による外交圧力により台湾と国交のある国はさらに減っていき、中国から台湾への旅行者も増えないままだと予想されます。

蔡英文氏の政策②:原子力発電所の全面停止

台湾社会では2011年の東京電力福島第1原発事故以降、一時的に原発反対の声が高まりました。
現在は、火力発電所稼働による大気汚染などの理由で原発支持派が優勢です。
今回反原発派の蔡英文氏が当選したため、原発に関する議論は再燃するでしょう。

蔡英文氏の政策③:0歳から6歳までは国が子どもを育てる

台湾の出生率は2014時点で1.1(日本は1.4)となっており、深刻な少子化が進んでいます。
これに対し、蔡英文氏は「0歳から6歳までは国が子どもを育てる」という目標を掲げ、子どもがいる家庭に育児補助を支給することを公言しています。
これにより世界最低レベルの出生率がどれほど改善されるのか、多くの人々が関心を寄せています。

蔡英文氏の政策④:国民党の資産没収。年金制度改革。

過去蔡英文氏は、中国国民党の資産を調査する「不当党産処理委員会」を設置するなど、国民党の資産没収を積極的に進めてきました。
また、国民党の支持基盤でもある軍人・公務員・教師(軍公教)の年金優遇策の見直しにも着手してきた過去もあります。
台湾は日本と同じく少子高齢化が進んでいるため、年金制度の改革は台湾にとって急務です。
よって今後4年間は、国民党関係者・軍人・公務員・教師(軍公教)に偏っている手厚い年金補助を減らし、全体のバランスをとる方向にさらに動いていくことが予想されます。

蔡英文氏の政策⑤:FTA、CPTPPへの加入

蔡英文氏は、FTA(自由貿易協定)やCPTPP(包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定)への加入を推進しています。
中国と疎遠になる代わりに、アメリカや日本をはじめとする世界各国との経済的な結びつきを強くしようとしているのです。

蔡英文氏の政策⑥:日本との関係の強化

蔡英文氏は2016年に行われた前回の総統選挙でも勝利しています。
2016年に発足させた政権では、重要ポストへの知日派の登用が目立ちました。
例えば、対日窓口機関とされる亜東関係協会の会長には、知日派とされ自身の側近でもある邱義仁を起用しました。
また、駐日大使に相当する台北経済文化代表処駐日代表には、「知日派の重鎮」と評される謝長廷を起用しました。
元行政院長(元首相)が駐日代表に起用されるのは初めてであり、この異例の人事は蔡英文氏の日本重視の表れだと言われています。
これら事実から、蔡英文氏は今後4年間も重要ポストに知日派の人物を登用し、日本との外交を重視することが予想されます。
政治的にも経済的にも日台の距離が近くなることは間違い無いでしょう。

参考記事:

関連記事