アメリカ大統領選挙が台湾に与える影響6つ【台湾ニュースの翻訳】

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2020年11月3日にアメリカ大統領選挙の投票が行われました。

これに関し、今回は台湾のニュースにあった”米国大統領選が台湾に与える影響”という記事を翻訳しました。

現状での台湾メディアによる分析ということで台湾人の目線を紹介させていただきます。

原文:〈觀察〉美國大選拜登聽牌 對台灣政經六大影響面面觀

 

米国大統領結果が台湾に与える6の影響

①バイデン候補が当選した場合、台湾がCPTPPに加入できる可能性は高い。

バイデン候補が当選した場合は米中関係を改善する可能性があるため、トランプ現大統領ほどの米台関係は期待できない。ただ、バイデン候補は伝統的な民主党思想と国際多国間主義思想をもっており、CPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)はバイデン候補が副大統領だった時にサインしたものであるため、CPTPPに回帰する可能性がある。これに伴い、アメリカの支持のもとに台湾がCPTPPに加入できる可能性があり、これは台湾にとって悪いことではない。

なお、米国が台湾を支持することは米国の主流な考え方であり、党を跨いだ共通の認識である。バイデン候補が当選しアメリカが国際組織に戻った後は、台湾はアメリカとの間でTIFAやBTAにサインできる可能性がある。

②台積電と鴻海の米国での活動に影響はない。

トランプ現大統領の任期内に、台積電(TSMC)はアリゾナ州フェニックスに、鴻海(FOXCONN)はウィスコンシン州に工場を設立した。

民主党であろうが共和党であろうが、半導体技術をアメリカに誘致したいというのは共通の認識である。台積電の国際政策副総裁であるPeter Cleveland氏は「台積電の目標はアメリカ経済の安全性を高め、アメリカが半導体業においてリーダーシップをとり、フェニックスにおいて数千もの新しいハイテク雇用を生むことである」と述べている。台積電がアメリカに投資する影響は小さくない。

鴻海に関しては、郭台銘(テリーゴウ)氏が「アメリカ連邦政府、州、地方自治体などが鴻海に対する承諾を守れば、鴻海もそれを守っていく。そして、ウィスコンシン州での投資を持続的に拡大していく予定だ。」と述べている。

鴻海は米国ウィスコンシン州において昨年末に520名を超える社員を雇用し、現地に7.5億米ドルの投資をしており、そのうち5億を超える部分はウィスコンシンバレー科学技術パークの建設に投資している。アナリストは「バイデン候補が当選したとしても鴻海による投資案件はなくならない、この投資を停止したらウィスコンシンでは500人を超える失業者が発生するため、鴻海による投資は続く」と述べている。

③米中貿易戦争は終わらない。テクノロジー産業のリスク分散と生産効率増加。

トランプ現大統領の任期中に米中貿易戦争が起きた。アメリカは中国を除いたグローバルサプライチェーンを再構築しようとしており、これからも米中貿易戦争をやめることはない。しかし、バイデン候補が当選したら、米中貿易戦争がこれまでより悪化することはないと予想されている。

バイデン候補は中国との競争に関し、戦争ではなく強力な資本力を用い、制裁ではなく抑制と均衡による対中政策をとる。そのため、バイデン候補が当選した場合は中国を排除する勢いが弱まる。

台湾企業は「親米&中国との対立は避ける」という考えのもと、テクノロジー産業のグローバル戦略を有利に進めるため、リスク分散と生産効率の両方を兼ね備えた「フレキシブルなサプライチェーン」の戦略をとる必要がある。

④COVID-19により金融緩和政策は維持され、台湾ドル高になる。

トランプ現大統領が当選しようが、バイデン候補が当選しようが、アメリカは貨幣政策により経済へのダメージをコントロールする。今後も2〜3年は米ドル安となり、それに伴い台湾ドルは高くなる可能性がある。

⑤金融相場の成長 + 産業の利益増加で台湾株は長期的に上昇する。

バイデン候補が当選したら、金融緩和政策が持続される。これは、金融相場が継続して伸び、半導体企業の利益が増加し、米中貿易戦争の勢いが弱まることを意味している。これにより台湾株は上がり続けると考えられる。

現在アメリカ大統領選挙はこう着状態にあり、トランプ現大統領は裁判で決着をつける姿勢を見せているので、短期的には台湾株及び世界株が下がる可能性がある。しかし、中長期的には上がり続けるだろう。

安聯台湾科技基金のマネージャーである廖哲宏氏は「経済データは好転しており、半導体部品はずっと供給が追いついていない。ファウンドリ、半導体設備、IC設計などが主流である点は不変であり、iPhone12の生産は順調だ。iPhone12の発売は5Gインフラの建設を加速させている。」と述べている。

また、アナリストである彭博氏は「バイデン候補が当選した後は、米中貿易戦争の勢いが弱まり、石油化学関連の輸出業者は関税の低下に伴い利益を出すと指摘している。具体的には、台塑、南亞塑膠、台化などの企業が利益を得る。」と述べている。

⑥バイデン候補が蔡英文総統からの電話を受けるかどうかは、米国在台湾協会の次期人選の基準となる。

これまでトランプ政権は親台政策をとってきた。具体的には、2019年に”台湾旅行法”及び”アジア再保証推進法”を、2020年に”台北法”及び”台湾保証法”を締結してきた。また、近年は米国在台湾協会(AIT)の台湾における努力も重要視されてきた。これらの動きは米台間の関係を強化させ、アメリカが台湾を支持するという民意も高め、ワシントンの台湾に対する承認も具体化された。

確かに、民主党のバイデン候補は選挙前に台湾との密接な関係を認めたが、将来的な米台関係の密接度は国民の関心により変わり得るだろう。4年前にトランプ現大統領が当選した際、蔡英文総統はお祝いの電話をし、北京政府を刺激した。今回の新大統領が蔡英文総統の電話を受けるかどうかは、米台の良好な関係が継続するかどうかの重要な指標となり得るだろう。

米国在台湾協会(AIT)の現所長は2021年に任期を終える。米国在台湾協会(AIT)は米国国務院が”台湾関係法”に基づき設置した代表機関であり、米国大統領及び各政府機関が台湾との間でとり決める各種計画を行う機関である。バイデン候補が蔡英文総統からの電話を受けるかどうかは、米国在台湾協会(AIT)の次期人選がどうなるかを知るための基準となり得るだろう。

原文:〈觀察〉美國大選拜登聽牌 對台灣政經六大影響面面觀

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